内容説明
13年前、鈴原病院に事務部副部長として入職した竜崎が配属されたのは医事課だった。
入って早々、迷惑な患者による恐喝行為や暴力行為、病院内の私利私欲を貪りまったく仕事をしない副院長、
節操のない男女関係や不当な人事を行う理事長など、病院内部の人間に潜む「異様さ」に直面する。
竜崎はそのような連中に毅然と立ち向かい院内環境の改善に努めるなかで、
老朽化した病院の建て替え計画を進める担当となる。資金調達のため内部事情を知るうちに、
理事長を筆頭とした既得権益をもつ人間たち(=パラサイツ)によって病院が私物化され、
経営が圧迫されていることが明らかになる。
この頃にはすでにこの病院の諸悪の根源が理事長にあることに気づいていた竜崎は、
強大な権力を前に一刀両断にできる機会を虎視眈々と狙っていた。
鈴原家をはじめとした病院に巣食うパラサイツの悪事や、
病院改修工事に向けた資金調達の道のり、鈴原病院の体質改善を装い竜崎に仕掛けられた罠……。
「いつか必ず経営を改善し理想の病院を目指す」と懸命に食らいつく竜崎が、次々に降りかかる災難に挑む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yam6
6
恐らく著者の実体験を小説化したのだろう。幻冬舎メディカル何とかは、医療者に原稿を書かせて出版することを生業にしているのだろうが、あまり良い噂は聴かないので、この作品は成功した稀有な例だろう。 内容は悪くない。地銀の貸しはがしは今でも横行しており、連中はそれが正しいと思っている。貸すときは「ぜひ借りてください」と揉み手で貸し付け、債務超過すると「赤字経営なのがいけないんだろ、不良債権は整理するのが社会のためだ」。まあ、総じて医者は経営下手だし、逆に稼げば後ろ指刺されるし、大変だよね。2022/11/04
GOTI
3
☆☆★池井戸潤の勧善懲悪、リベンジ小説と濱嘉之の「院内刑事」シリーズを足して三で割った感じ。テンポが良くて軽い、小説と言うよりはノベライズです。地方総合病院の医事課副部長の竜崎がモンスター・ペイシェントや無能な副院長、理事長の権威をバックに権勢を張る愛人看護師を放逐し、病院の健全化を図る。その途上、黒字化が進まない病院に対し、主力行等が融資の差し止め、M&Aによる売却を画策する。理事長一家を含め病院に巣くうパラサイツ(寄生虫)をいかに駆除し再建を果たすのか? 2022/06/09
ヨシシィ
1
親から引き継いだ病院を食い物にする経営者一族と、それに群がる取引先・・・。やりたい放題の地方病院に乗り込んだ豪腕管理職による病院再生ストーリー。筆者の経営者としての経験を元に書かれたフィクションだが、企業にパラサイトするやからが実にうまく表現されている。特に理不尽を絵に描いたような理事長一家と、現場を見ずに数字だけで物事を判断するメインバンクの審査部長は、本当にあるある!2022/07/24
みやちゃん
1
実体験に裏付けされた小説だろう。展開としては平坦だが、企業再生の道筋が描かれている。精緻な描写。池井戸さんのようなエンターティメントには欠けるが、違う意味で読み応えあり、現実に近い。描かれた世界は、こんなもんだろう。人の性は変わらない。自分の生きてきた世界は、そういうものと縁遠かった気がする、これだけの修羅場で生き抜くというのは凄い。次作に期待したい。2022/07/13
Stevie G
1
竜崎理事長、ご苦労様でした。実話に基づいた文章とお見受け致しました。金融は、やはり人を見て仕事をするものですね。2022/04/17