内容説明
日本の面積の約40倍に及ぶ〝地球最大の氷〟こと南極氷床。極寒の環境は温暖化の影響を受けにくいと言われてきたが、近年の研究で急速に氷が失われつつある事実が明らかになった。大規模な氷床融解によって、今世紀中に2メートルも海面が上昇するという「最悪のシナリオ」も唱えられている。不安は現実のものとなるか。危機を回避するためにすべきことは。氷床研究の第一人者が、謎多き「氷の大陸」の実態を解き明かす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きみたけ
74
著者は北海道大学低温科学研究所教授の杉山慎先生。氷床研究の第一人者が、謎多き「氷の大陸」の実態を解き明かした一冊。これまで南極の氷床は温暖化の影響を受けにくいと言われてきましたが、ここ最近の研究で急速に氷が失われつつある事実が判明してきました。今世紀中に2メートルも海面が上昇するという「最悪のシナリオ」も唱えられている中、危機回避すべく対策を考察しています。南極の氷の巨大さを改めて知ると共に、それが氷解していく怖さを感じました。2022/05/16
樋口佳之
66
二一世紀に入ってから南極を観測する技術が飛躍的に向上して、それまでわからないことが多かった氷床の研究に大きな進歩をもたらしたのである。実際この分野では、一〇年前の教科書は古くてとても使えない。/温かくなれば氷は溶けるだろうなんて話では無くて。知らない事ばかり。勉強になりました。世界の合意が実を結ばなければ、最終的にはジオエンジニアリングにすがるしか無くなるかもなのだから、精緻な観測とモデル化は、どのような道筋をたどるかに関わらず大事。(但し、その研究の進展がジオエンジニアリングを後押しするのでなければ)2022/01/08
Sam
55
アムンセンが南極点に到達してから100年あまり。その後大きく進んだ南極観測・研究だが筆者によればまだまだ日進月歩とのこと。専門的な説明も多いが、本書で理解すべき最も基本的な知見は、南極氷床が地球の大動脈ともいえる海洋循環を通じて気候と生態系に大きなインパクトを与えていること。つまり、海水準の上昇だけでなく溶けた水が海洋に流れ込むと海水の塩分と密度が変化し、地球全体に熱を届けている海洋の循環が滞って気候変動をもたらすということ。IPCCの最新の評価報告書が鳴らす警鐘から目を逸らしてはいけないと改めて思った。2022/02/12
みこ
35
恐らく誰もが薄々は分かっているであろうがそこまで詳しくは理解していないであろう事象について詳しく解説。最初の方で実は今南極で溶けている氷の量は地球全体の海面上昇にそれほど影響を与えてないことを示し「え?そうなの??」と思わせてからの真相には驚くばかり。氷と一言で言っても海面に面している所の氷の融解が将棋倒しのように徐々に大きな影響を与え加速度的に融解が進むと日本沈没がファンタジーと言っていられなくなってしまう。今後の課題は人類全体の共通の危機意識。2022/02/02
塩崎ツトム
25
南極の巨大な氷を、氷の増減だけを考える「穴の空いたバケツ」程度のものと思っていたが、実際のところは将棋くずしのような、個々の因子が絡み、もしかしたら大崩壊をおこしかねない繊細なものだと解説。現代の南極観測の最前線も知れて大変良い。しかし気候変動っていうのは、猫が載った卓でやる将棋崩しのようなもので、一寸先は闇である。こんな事態にしたのは人類だが、未来の破局の姿の確度は、なんとも心もとない。2022/01/06
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