内容説明
ある夏、ある少女の「1か月」。
いつかどこかに存在したあらゆる一瞬の堆積が、鮮やかに立ち上がる。
第58回群像新人文学賞受賞作。期待の書き手のデビュー作がついに文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
74
構成や文体、セリフまわしなどがすごく独特で、何度かページを戻って読み返した。玄人好みではあるが、どこか読んでいていい意味で引っかかりがある作品のほうが、乗代氏のその後のご活躍を見ていると、優れた小説(ひいては作家)となる可能性を秘めているのかもしれないと思った。今後たぶん、作家読みすることになるだろうな。2022/01/26
ゆのん
69
このタイトルは何と読むのだろう?と思っていたが、読み始めて理解出来た。17.8歳の『あの少女』の1ヶ月の物語。純文学は決して得意とは言い難い私だが、乗代雄介作品には心惹かれてしまう。作者の想いを読み取れるだけの読解力は無い為、何度か読者失格だななんて思いながらも惹かれてしまうのである。故に『好きなものは好き!理由なんて要らない』と心の中で叫ぶ。今作で特に好きで読み返したのは家族4人で焼肉に行く場面。道すがらの会話、店内での会話はとても身近で楽しめた。これからの作品も楽しみに待ちたい。2022/01/10
kei302
68
2015年の群像新人文学賞受賞作でデビュー作、文庫化。中身のなさに戸惑いを覚えた。いや、中身はあるのです、十分すぎるほど。理解も説明も解釈も不要。ちょっと周囲の生徒たちよりも知的レベル、精神年齢高めの阿佐美景子の2014年7月が詳細に描き出されている。事件もハプニングも恋愛要素もない、でも、17、8歳の日常が濃厚に詰まっている。NetGalleyJP2022/01/15
三代目けんこと
53
「ある少女の日常を、素晴らしい文体で描き切った一冊」と言えればカッコいいんだが、一行たりとも理解できなかった。文学ってむずけぇ~。2022/08/14
おっしー
51
著者初読。高校2年生の少女が過ごしたひと夏の話。些かレトリカルが過ぎる文体になんの話をしてるか迷子になりつつ、日常を細やかに表現する言葉の端々から、独特な緊張感を感じ取る。学校生活、家族と一緒にいる時、叔母と話す時間、どれも神経を使って過ごしてるように感じた。文学を齧ってる多感な女子高生の感性を共有できた気分。結局彼女の具体的なところは最後まで見えなくて、でも彼女とその周りの人が存在したという事実は明確に頭に残るし、描かれない部分だって想像してしまう。現在の彼女と一緒に過去を観察した、そんな気分。2022/02/25