- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
「させていただく」は正しい? 現代人は相手を敬うためでなく、自分を丁寧に見せるために敬語を使っていた。明治期、戦後、社会構造が変わるときには新しい敬語が生まれる。言語学者が身近な例でわかりやすく解説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
66
ある意味、耳障りになっている「させていただく」。もちろん、使う立場、使われる立場など、その場面場面で違う要素もある。使われる立場が多いと思うが、そこで感じるのが、距離感。明らかに、近しさ・親しさが欠如していることが多い。それは、今の社会の人間関係の在り様の変化にも結び付いているのではと思う。2024/05/02
ネギっ子gen
63
【社会環境が変わるときには、新しい敬語表現が生まれる】 コミュニケーション論・語用論・文体論で、実際のコミュニケーションで使われた言葉のダイナミックな流れを分析している言語学者が、身近な例を引きながら使用実態を言語学的&語用論的に解明する。<言葉は時代と共に、そして私たちの言語意識に合わせて変化していきます。/使われれば使われるほど敬意がすり減り、「させていただく」が元々の意味や使い方から遠く離れて変化していくのは、仕方のないことです>。その上でこれからは、若い人たちの斬新な使い方に期待している、と。⇒2023/12/28
とよぽん
58
最後まで読んで、なるほど副題の「日本語と敬語のゆくえ」を考える内容だと思った。「させていただく」という比較的新しい敬意表現を切り口として深く実証的に掘り下げた労作に、さすが言語学者! と感じる。敬語が使われ続けることによって「敬意の漸減」が進み、人々はより敬意を感じてもらえる表現に移っていくのだという。そして現代の若い人は自分を品位ある人間に見てもらうために敬語を使う傾向があるそうだ。自己愛の表出が敬語とは・・・。人と人との間に求める距離感が敬語表現に反映しているなんて面白い。2022/05/02
ま
47
多くの人に多用されるのに、多くの人に耳障りと言われるのはなぜか。そうか敬語のニーズが変わってきているんだ。今は上下関係よりもむしろ見知らぬ他者に距離をとるために敬語を使う。自分を丁寧に見せる化粧のようなものか。「させていただく」が醸し出す唯一無二の距離感。敬うことと距離を置くこと、親しむことと近づくことは表裏一体。「敬遠」とはよく言ったものだ。いろいろと感心する一冊。2022/12/05
竹園和明
45
誰もが当たり前に使ってるけど何か違和感が付きまとう「させて頂く」。自分は極力使わないように意識してるけど、やはり場面によっては使わざるを得ない時もある。この不思議な謙譲語を細かく解析!。相手との距離感を保ちつつ自分が引く事で自分の安泰な立ち位置を確保する…という、自分を守る為の言葉ってわけね。そこまで腰を低くしてコミュニケーションを取らなきゃいけなくなってしまった背景は何?。へりくだりは留まる処を知らず、「感動させて頂きました」なんて変な使い方まで。オッサンは付いて行けずで降参させて頂きます💨。2022/11/14