内容説明
本書は,精神分析を知性化させたり形骸化させたりすることなく,患者にとって意味のある体験とするために,どのように実践できるかについて書かれたものである。
精神分析の治療成果である自己分析は,これまで分析家との同一化を通して獲得されると考えられてきた。しかし本書では,(分析家との同一化に依らずとも)自己分析の力を患者が獲得できるように支援できる方法が細かく丁寧に紹介されている。
関係性偏重にある現代の精神分析治療を再考し,ブッシュは私たちに日常的に行っている治療行為の意味を問うてくる。「なぜ質問をするのか?」「なぜ抵抗を克服させようとするのか?」「なぜ無意識を解釈しようとするのか?」
これまで精神分析を実践してきた治療者にとっても,力動的心理療法に関心のある人にとっても,治療における患者の自我の重要性を再発見できる一冊となっている。
目次
監訳者まえがき
日本の読者の皆様へ
序文
イントロダクション
1 個人的な旅
2 精神分析の知
3 前意識に語り掛ける
4 分析家の言葉の変容機能
5 無意識の私たちへの語り方
6 作業可能な「今ここで」と「あのときあそこで」の理由
7 自由連想
8 なぜ質問をするのか?
9 ワーキングスルーと抵抗分析
10 転移内での取り組み
11 逆転移内での取り組み
12 会話への導入
13 中盤
14 終結
15 内省と解決
文献
訳者あとがき
索引