名前だけでもおぼえてください

著者名：風カオル【著】

小学館（2022/01発売）

• ISBN：9784093866309

内容説明

孤独な老人と女芸人異色の漫才コンビ誕生！

　売れないお笑い芸人、保美。芸を磨くべく日々精進するが、世間からは全く名前もおぼえてもらえないまま月日は残酷に過ぎてゆく。
　事務所の先輩バンゲリング梶井がＰ１で優勝したとの報に触れ、焦り、もがき苦しむ保美。そんな保美に梶井は介護ヘルパーのアルバイトを引き継いで欲しいと賢造爺さんを紹介する。家族からも疎まれる頑固な賢造だったが、保美とは少しずつ心を通わせ打ち解けていく。そしてこれが保美の人生を変える運命の出会いとなる。
　ある日、保美は漫才の営業先に賢造を連れていく。観客席にいる賢造は、勝手に舞台上の保美の漫才に合いの手を入れ、客席を爆笑の渦に。保美のマネージャー・関矢は、二人の見事な掛け合いに可能性を感じ、漫才コンビとして売り出すことに。
　もくろみは見事に当たり、二人はお茶の間の人気者に。年齢差を超え生まれた笑いが、日本中に幸福をもたらし、押しも押されぬ売れっ子漫才コンビへとのし上がる。だが、数年後、高齢の賢造の認知能力に限界を来たし始め・・・・・人生百年時代、まだまだ続くと思われたコンビに危機が訪れる。最後に下した二人の決断が涙を誘う。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[シャコタンブルー]

会話文が多いのでテンポ良くスラスラ読めた。漫才のなかでも一番好きなサンドイッチマンの漫才のように面白かった。３２歳の保美と７５歳の賢造の「スミレ」コンビの漫才は賢造のボケ老人ぶりが大いにウケる。それを大らかに温かく受け入れる観客にも拍手を贈りたい。漫才ほど現場の空気感を肌で感じる仕事は無いだろう。スベッた時の恐怖、ウケた時の高揚感はスリル満点だろう。だからこそ相方との相性は大切だ。りん子との長年のコンビ解消する時の複雑な心情が痛いほど伝わってきた。「苦しさと悲しさも、みじめさも笑いに変えるのが芸人だ」。

2022/04/13

[ぶんこ]

70代の賢造さんにとって、保美さんとの漫才の舞台に立てたこと、素晴らしい宝物の経験でしょう。保美さんにとっても得難い経験。つくづく生活に笑いが必要だと痛感。最後の大阪見物での大阪の人の笑いがいいですね。辛くなりそうな時、笑えるように意識を変える努力をしようと思いました。お笑い芸人さんたちの様子も伺えて、応援したくなりました。

2022/05/03

[のりすけ]

ハガキ職人だったり漫画だったり、そこに目を付けたか！な風さん。今回は漫才。売れない女芸人さんと介護が必要なご老人のコンビ。タイトルがものすごく巧い。ありがちな常套句にこめられた意味ったら！「帰って」あるいは「って」が入ってないのはそういうことなのね。

2022/04/03

[hitomi]

面白かったです！売れない芸人の保美が、アルバイトの家事手伝い先で出会った賢造さん（認知症気味のおじいさん）とコンビを組んで漫才をすることになるお話です。二人の会話の微妙なズレや、賢造さんのとぼけた言動に何度も吹き出してしまいました。二人の周りがどんどん優しい世界になっていった気がします。保美の、賢造さんへの愛あるツッコミがたくさんあって、心がほんわかしました。

2022/02/13

[Atsushi Mori]

最近読み漁っている風カオル 無茶な設定だけど、テンポよく展開していくのが面白くて一気読み。 ホントにこんなコンビがいるんじゃないかって思うくらい言葉の掛け合いがイイ。 ドラマ化できそうだね！

2023/04/03