内容説明
切り立った岩の上で独り稽古を積む、藤戸藩お抱えの道具役(能役者)の長男・屋島剛。15歳の剛は、急逝した藩主の身代わりとして江戸城に送り込まれた。「能」を使った秘策によって、貧しい藩は生き延びることができるのか。
藩の命運を握った剛は、「想いも寄らぬことをする」決意をした――。
天保年間の土地も金もない弱小藩を舞台に、ひとりの少年武家が辿る過酷な運命が、圧倒的リアリティを通して描かれる。
謎と謀(はかりごと)、美と畏れ。研ぎ澄まされた文章と壮大なる謎、唯一無二の武家小説!
「弱冠十五歳の少年が、柳営の棟梁たる将軍に対して、己の能の技量のみを武器に文字通り徒手空拳で命がけの闘いを挑む。しかも与えられた期間は、わずか七ヶ月しかない。これぞまさにミッション・インポッシブル 」
――川出正樹 (解説より)
※この電子書籍は2019年1月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y.yamabuki
23
藩のお抱え能役者の長男、剛は藩主の身代わりとして江戸に入る。能を手段に「あの御方」(将軍)に近付き、果たしてどうやって藩の内政を豊かにするのだろうか?と訝っていたら、まさかの衝撃の手段に息を飲む。最後の究極の決断。見事なストーリー(計画)を美しくやり遂げる。胸を打つラストに何とも言えない余韻が残る。終盤、剛は友の保の言葉「能はやさしい」の意味を理解する。「…生きとして生けるものへの、尽きることのない肯定。それが能を能にしている」難しい、難しいけれどほんの少し能が分かった気がした。今度じっくり観てみたい。2022/05/10
tomoka
10
能の知識は皆無のなか読み始め、途中、能についてググりながら読み終わりました。青山さんの文体が好きで『この言い回しが好き、ここの表現がいい』って思うところがたくさんありました。文中何度も出てくる「要る話をするときは要らぬ話から入る」これも妙に腑に落ちる表現で好きです。2023/01/11
MIKETOM
9
天才能役者。極貧の藩の浮沈を賭け、命を投げ出して将軍にある要求を突きつけようと画策、てな話。ところがこれが…個人的感想を言わせてもらえば全っ然面白くない。深淵まで掘り下げた能に関する蘊蓄、何度もしつこく出てくる同じ話、当時の能を取り巻く各大名や将軍家などの思惑や状況、そして主人公の内面世界がウダウダグダグダ…と延々書き連ねられる。ストーリーがさっぱり進まないのだ。ストーリー3ウダウダ7ぐらいな感じ。その反面、天才主人公の超絶秘技を舞台で披露するシーンなどはほぼカット。それを書かずして→2025/05/06
coldsurgeon
8
能という洗練された、研ぎ澄まされた美を追求する芸術を背景に、とても奇抜なはかりごとの顛末を記した物語である。江戸末期、小国の下級武士の息子と生まれ、能を舞うことを生業とする少年が、藩主の身代わりとなり、小藩の命脈を保ち、力を蓄えさせようと画策する奇抜なストーリー。藩主の付き合い、能の舞われる仕組みなど示され、興味深く、楽しく読むことができた。所作の美しさは、能を舞うためにあったのかもしれない。能を美しく舞うために、舞台と日々の暮らしに境目があってはならz、美しく居ることが求められたことから類推できる。2022/03/02
かーな
6
能についてまったく知識がないのですが、最近犬王というアニメーション映画のを観たのとつながって多少イメージできて大変面白く思いました。 最後は泣き…ですよね2023/11/16
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