「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜

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「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜

  • 著者名:早川タダノリ
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 青弓社(2018/07発売)
  • 夏休みの締めくくり!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~8/24)
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  • ISBN:9784787220653

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内容説明

「世界に輝く 日本の偉さはこゝだ」「日本精神に還れ」……これらは2016年現在の書籍ではなく、80年前に出版されたもの。アジア・太平洋戦争に向けた国民総動員体制をあおる書籍が次から次に出版された。中山忠直『日本人の偉さの研究』、三浦葦彦『神国日本の啓明』、服部教一『日本の大使命』、池崎忠孝『天才帝国日本の飛騰』……こんな勇ましい書名だけではない。平野増吉『日本精神とお墓』、笠原正江『働く婦人の生活設計』、上野ソウ一『み国のために働く小産業戦士の道しるべ』などの「決戦生活心得トンデモ本」も聖戦を支えた。

「我が軍」「八紘一宇」などと総理や政治家が平気で公言する現在、ルーツである80年前の「日本スゴイ!」キャンペーンを発掘して、思わず噴き出す陳腐な内容を白日の下にさらす。

目次

はじめに

第1章 「日本主義」大ブーム到来
 「日本スゴイ」ネタの原型
   「日の出」編集部編「世界に輝く 日本の偉さはこゝだ」(〔「日の出」一九三三年(昭和八年)十月号付録〕、新潮社)
 日本主義は全人類の奉ずべき道徳精神である
   井乃香樹『日本主義宣言』(建設社、一九三四年〔昭和九年〕)
 日本人の底力・粘り強さは米食からくる
   中山忠直『日本人の偉さの研究』(章華社、一九三三年〔昭和八年〕)
 お墓マニアが語る日本精神
   平野増吉『日本精神とお墓』(小森繁雄、一九三六年〔昭和十一年〕)
 満洲事変で「日本人」はどう変わったのか
   高橋三吉/日比野正治講述、大阪毎日新聞社編「日本精神に還れ」(大阪毎日新聞社/東京日日新聞社、一九三四年〔昭和九年〕)
 「天才帝国日本」の栄光と崩壊
   池崎忠孝『天才帝国日本の飛騰』(新光社、一九三三年〔昭和八年〕)
 混沌化する「日本精神」諸派
   池岡直孝『日本精神の実現』(章華社、一九三五年〔昭和十年〕)
 恐るべき「君が代」の秘密
   鹿子木員信『日本精神の哲学』(文川堂書房、一九四二年〔昭和十七年〕)
 全国民を「日本国民産業軍隊」に改造せよ!
   高松敏雄『真日本主義国民改造と道義大亜建設』(刀江書院、一九四一年〔昭和十六年〕)
 「日本主義」を掲げ御用組合結成
   神野信一『日本主義労働運動の真髄』(亜細亜協会出版部、一九三三年〔昭和八年〕)

第2章 「よい日本人」のディストピア
 「日本人に生まれてよかった」?
   新居格編『支那在留日本人小学生 綴方現地報告』(第一書房、一九三九年〔昭和十四年〕)
 学校教師を「ミニ天皇」化する「日本的学級経営」
   永井煕『週間単位 尋六の学級経営』(第一出版協会、一九三九年〔昭和十四年〕)
 学校は児童を日本的に鍛える道場である
   野瀬寛顕『新日本の学校訓練』(厚生閣、一九三七年〔昭和十二年〕)
 掃除の時間になると、校長やおら壇上に立ち……
   土方恵治『行の訓育』(モナス、一九三九年〔昭和十四年〕)
 小学生の裸乾布摩擦に目を細める文部省視学官
   草場弘『皇民錬成の哲理』(第一出版協会、一九四〇年〔昭和十五年〕)
ほか

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

めろんラブ 

64
先の戦時下、国民はどのように洗脳されたのか。その一端を知ることができた。タイトルからもうかがい知れるように、「自国礼賛が凄すぎてウケるんですけど」といった体で小バカにしつつ批判的に語られた一冊。軽い語り口とは裏腹に、収集した資料の膨大さからも、筆者の真摯な姿勢が見うけられる。いつの時代もプロパガンダ的な活動はあるけれど、日本国(民)は他より優れているという言説が堂々とまかり通るようになった時には既に・・・という危機意識と共に、もしや今も?と冷や汗。「戦争が廊下の奥に立つてゐた」(渡辺白泉)を思い出しつつ。2017/03/13

ヨーイチ

44
実際に手に取ったのは朝日文庫。著者のスタンスを知っていれば、内容は想像がつく。大昔の話なので「今とは関係ない」「昔は遅れてた」って言ってしまえばそれまで。昨今の「日本スゴイ」 探しの根底に戦前の翼賛体制下での活動が有ると著者は主張している。多分そうなのだろう。全く役に立たず、気の重い運動、主張が延々と続く。再確認したのは公的機関、外郭団体が挙って皇国史観から導き出された理屈に従って、粛々と「仕事」をして来たって事か。こうなっちゃうと個人の思想なんて笹の小舟であろう。続く2019/07/18

おかむら

43
戦前のトンデモ本(今から見ると)の数々を紹介。当時は本気。どうかしてるぜ。そして今も同じこと主張し続けている一群がいる怖さ。万世一系の天皇がいる日本はよその国より優れてる、って私にはサッパリわからんよその理屈。2016/09/22

oldman獺祭魚翁

34
図書館本 HONZで紹介されていてこれは読まなくてはと思って借りてみた。最近テレビのバラエティー等で、外人を集めて日本はスゴイと持ち上げる傾向の番組を見掛る。ゴールデンタイムに流しているんだから視聴率はそれなりに稼いでいるんだとは思うけど、なんとなく「ケツがムズムズする」(失礼)居心地の悪さを感じていた。同じ傾向は本屋でも新刊書として見かけるし、ネットを見れば似たようなエピソードが垂れ流しになっている。僕は別に自虐史観を支持する積りもないし良いとは思っていないが、それなら「進め一億火の玉だ」の頃は…続く2016/08/22

更紗蝦

29
この本の中で紹介されている「戦時下の自画自賛の言説」が、現在は影も形もないのであれば、「当時は非常時だから仕方なかったのかな…」と同情する気持ちも多少は生じてきますが、戦時下でもないのに現在でも立派に残っていることが心底恐ろしいです。特に、「労働=奉仕」という価値観は、景気が悪くなったから「復活」したというわけではなく、景気が良かったバブルの頃にも強固だったわけで、職場を「戦場」、労働者を「産業戦士」とみなした戦時中の価値観は、「24時間戦えますか」というリゲインのCMソングを思い出さずにはいられません。2016/10/11

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