内容説明
過疎化する町にある高校の教室で、一人の生徒が消えた。最初は家出と思われたが、失踪者は次々に増え、学校は騒然とする。だけど――僕だけは知っている。姿を消した三人が生きていることを。
それぞれの事情から逃げてきた三人は、僕の部屋でつかの間の休息を得て、日常に戻るはずだった。だが、「四人目」の失踪者が死体で発見されたことで、事態は急変する――僕らは誰かに狙われているのか?
壊れかけた世界で始まる犯人探し。大きなうねりが、後戻りできない僕らをのみこんでゆく。
発売直後から反響を呼び大重版が続き15万部を突破した『15歳のテロリスト』の松村涼哉がおくる、慟哭の衝撃ミステリー最新作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナルピーチ
167
松村先生らしく、重めの物語は読後にしんみりとさせてくれる。帯には「子供たちが次々と消えていく」とか「謎の連続失踪事件」との謳い文句で、ミステリー作品をアピールしてるけど、卒直な感想としてはミステリーというよりも、登場人物達が抱える悩みや問題、そこに友情を絡めてみせる切ない物語だと感じた。キーとなる“ゲーム”に例えるならば、いろんな選択肢があってこその人生。やり直しはきかないけども選べるコマンドは1つだけとは限らない。間違いもあればそれを正す道もある。社会問題を組み込む熱量のある一冊に思わず胸が熱くなった。2022/06/27
ケイ
104
若者は生き辛い。何故だろう。残酷さがすぐそばにあるから? いや、歳をとっても同じことだろう。未成年だから、かもしれない。1人では生活出来ないという圧倒的に不利な立場。それでも高校生はまだ逃げ出せる。しかし、小学生なら、親の非人間性からどうやって逃げ出せばいいのだろう。高校生が逃げ出そうとする場合の話の1例を作者がここにあげている。それが動機か?と思わなくもないが、一石を投じるという意味での作者の提起。2023/06/24
えみ
68
現代社会の抱える問題を逃げ場のない若者たちの目線から描いた社会派ミステリ、批評する価値のある問題作だ。失踪、そして殺人…とある高校の二年A組からクラスメイトが消えた。壊れた社会、閉じ込められた世界。人は拒絶の中で生きている。頑張ってもどうにもならない理不尽な世の中へ警鐘を鳴らす一冊だった。家庭環境、学校生活、ネット社会、死角が多すぎる生活に慣れ過ぎたわたしは、きっとわかっている風を装って、結局何もわかっていないのだと思う。反社会的な行動が誰かのための行動ならば、それは崇高なことなのだろうか。答えはでない。2022/10/10
りなお
47
娘本。松村涼哉さんにハマっている模様。最後のまとめ方が上手。スッキリした読後感。登場人物が子供だけで聡い大人が皆無なのが残念。その為か児童虐待、ヤングケアラー、生活保護等重いテーマなのに軽く読める。社会問題を考える入り口としては面白い。2023/04/17
よっち
45
過疎化する町の高校で突然消えたクラスメイト。最初は家出と思われた失踪者は次々と増え、しかし四人目の失踪者が死体で発見されて事態は急変する慟哭のミステリ。それぞれの事情から逃げて同級生・堀口の部屋でつかの間の休息を得て、日常に戻るはずだった三人。しかし死んでいた同級生、部屋で発見された凶器のナイフ、身近に殺人者がいる可能性。情報が錯綜する中で失踪する堀口、明らかになってゆく三人の背景と閉塞感、積み重ねてきた伏線を回収しながら追い詰められてゆく彼らの状況を見事打破してみせた解決方法がなかなか鮮烈な物語でした。2021/12/22