内容説明
1年延期の末に開催された東京五輪をめぐっていったい何が起こっていたのか。社会的・政治的動向と国内外のさまざまなメディア上の言説を分析・検証し、ポスト五輪の東京を展望する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかむら
35
去年の東京五輪、終わってしまうと急速に忘れてってしまうけど、あれは64年の五輪の成功感と比べて明らかに大失敗だったよな、って事実をメディアとネットから徹底検証。そもそも湾岸部を開発したい東京都が誘致し始めて震災が起きたら復興五輪と言い出してコロナになったら打ち勝った証とかさ…。ザハとかエンブレムとか森発言とか数々のケチのつきまくりもまとめて読むと改めてひどいわ。第5章の「海外メディアはどう見たか」が面白い。韓国のシビアな視線に対して中国の意外な優しさ(北京五輪を控えてるから)。 2022/03/21
ぷくらむくら
3
こうして改めて経緯を眺めてみると多くの幻想と未来を見つめる眼の欠けている思惑が浮かび上がってくる。2023/08/06
たろーたん
2
東京五輪で最も空虚なスローガンなのは「復興五輪」だろう。そもそも、震災直後の状況で五輪に立候補する批判をかわすために生まれた言葉だ。当時の東京都知事の石原慎太郎でさえ、「復興五輪なんてネーミングの問題だ。最初に五輪があって、災害がその後、起きた。ちょっと気の利いた人間なら、だれでも考える」と振り返っている(朝日新聞2019年3月13日)。つまり、もともと空虚な言葉だったんだ。よく考えてみれば、東日本大震災と福島原発の事故で被害を受けたのは東北であって東京ではない。東京で行う福島復興の儀とは何だ?(続)2024/07/19
タイガーとらじろう
1
副題にある「変われぬ日本の失敗連鎖」としての東京五輪の実相が描かれる。2年前から積読状態だったが、2年経ったから冷静に振り返ることができる。そして2年後に開催予定の大阪万博も同じ流れにあり、むしろ失敗の質が上がるのではないかと予見される。文中の「東京五輪」の文字を「大阪万博」と読み替えが可能な文章が多いことに暗澹となる。2023/11/01
鴨長石
1
東京2020がどう報道されたかという観点からみれば、検証として一定の評価はできる。しかし、おそらく著者がもともと五輪に興味がないか批判的な考えをもっているのが透けて見え、偏った考察になっているのは否めない。また、そもそも本書の趣旨を誤解していたところもあるのだが、学生の研究が併せて掲載されていることも含め、内容が浅くて総じてがっかりした。もっと文化人類学や歴史、経済等あらゆる面から「コロナと五輪」の複雑な作用について論じてほしかった。2022/04/27