内容説明
2007年に念願の「省」に格上げを果たした防衛省。15年には集団的自衛権の行使を可能とすることなどが盛り込まれた「安全保障関連法」が成立し、ますます存在感を増している。歴代防衛官僚や幹部自衛官から、その組織の実像に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
38
『文部省の研究』では、森有礼をはじめ、岡田良平、戦後の天野貞祐、荒木万寿夫など、毀誉褒貶はあるものの固有名の存在が文部行政の格闘に説得力を与えていました。他方で戦後の安全保障は、戦前の反省からか抑制的な組織運営のため、固有名が語られない。軍事組織は無名の集団として現前すると、不気味な暴力性を帯びることで余計に警戒心を引き起こす。国民から軍事組織を引き離すことでは、シビリアン・コントロールが機能しているとはいえないでしょう。著者は社会の分断のひとつにこのシビリアン・コントロールの機能不全をみて、論をたてるア2021/12/11
サケ太
18
非常に面白い。戦後日本の安全保障を語る上で重要な警察予備隊、そして自衛隊を各人物らの列伝形式で語る。国防のために懸命に業務をこなしてきた男たち。警察予備隊設立に関わった加藤陽三の断り文句「断然行きません」に笑ってしまった。多くのエピソードに彩られ、現代まで語られる。「軍隊による安全」、「軍隊からの安全」。二つのバランスを保ちつことは出来るのか。周辺国のパワーバランスの変化は安全保障にどのような変化を及ぼすか、日本は、自衛隊は、国民に変化があるのか。注視せねばならないと感じた。2022/03/04
無重力蜜柑
10
「制服組」と「背広組」の双方を含む防衛省高官の列伝という形式を取った自衛隊史。一般人にも読みやすいようにと歴史読み物的な形式したらしい。それ自体価値のある試みだと思うし、純粋に類書も多くはないのでありがたい。自分はミリタリーには興味があるが自衛隊の組織、歴史、法律的な部分にはとんと無知で、かなり楽しい読書だった。「警察予備隊」という名前から始まった自衛隊が、その出自ゆえに初期の高官は(幕僚まで含めて)旧内務官僚が多かったというのは驚いた。そんなんでよく回ったな……。2022/05/14
Myrmidon
4
かっちりした研究書ではなく、筆者自ら「過剰な細密化と粗雑な物語化の中間」と語る通り、歴代幹部列伝といった読み物風。歴代幹部の個性もそれなりに面白いが、それ以上に旧内務省系と旧軍系の主導権争いや、防衛大と幹部学校の雰囲気の違い(幹部学校の方はやや憶測混じりだが)などが興味深かった。2022/01/14
Kelevra Slevin
3
「シラス」で呉座氏との対談を見て著者のことを知り本を手に取った。警察予備隊発足から平成後期に至るまでの自衛隊の歴代幹部のことを具体的なエピソードを交えながら紹介。正直、ほぼ知らない人しか出てこないのたが、キャラの濃い人間ばかりなので非常に楽しんで読めた。戦前と比較して戦後の軍隊の幹部に焦点が当たることはあまりないので、この著書を嚆矢に今後多くの自衛隊幹部に関する内容が出版されることを期待したい。2022/01/31
-
- 電子書籍
- たそがれに恋した伯爵 ハーレクイン