内容説明
紙幣印刷用紙が輸送中のトラックから強奪された。犯人は紙幣贋造を狙ったのだろう。そんな計画を察知した近藤庸三は贋造に必要な“製版の名人”の身柄を押さえ、紙強奪犯へ引き渡す取引を思い立つ。しかし、同じ企みを持つ土方と沖田、さらに強奪犯の一味も動き出していた……。二転三転する物語の“結末”は完全に予測不能。奇想天外アクション小説が遂に復活。シリーズ続編「NG作戦」併録。
目次
紙の罠
第一章 ここではとんびが三羽よってあぶらげのさらいっこをする
第二章 ここでは主要人物がABCで呼ばれボスはF氏と呼称されることになる
第三章 ここではF氏がビフテキを食いA氏はサンドイッチで我慢する
第四章 ここでは近藤が廃物利用をして友子の頭に穴があきそうになる
第五章 ここではボスの本名がわかりおばあさんが隠し芸を見せる
第六章 ここでは死体が留守番し近藤は角砂糖を万引する
第七章 ここでは角砂糖の用途がわかり近藤は三度めの気絶をおこなう
第八章 ここでは盗まれた紙の所在がわかり主要人物たちがそこに顔をそろえる
第九章 ここでは土方が秘密を公開しエレベーターが死刑台になる
NG作戦
桃源社版『紙の罠』あとがき
「近藤&土方コンビ」あとがき
【巻末資料】「日活映画ストーリー」より 危いことなら銭になる
編者解説 日下三蔵
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
katsubek
45
久々の再読である。昔のエンターテインメント。今はもう、こういう小説は流行らないんだろうなあ。伏線という言葉がある。昨今は「フラグ」なる言い方があるが、思うに、伏線というものは、それと気付かれることなく張られるもので、最終盤になって読者を悔やしがらせるものだろう。「フラグ」とは少し違うかも知れない。本書は「本格ミステリー」に位置付けられるものでもあろう。そこら中に伏線が張り巡らされている。畠中恵の師にあたる作者の作品。知の挑戦として楽しみたい。2021/06/21
hnzwd
32
印刷前の紙幣用紙強奪事件を開始として始まる、複数人・複数グループが混じっての一大アクション。都筑道夫のアクション小説は初でしたが、敵味方入り乱れての逆転に継ぐ逆転。裏切りありの争奪戦は面白かったです。公衆電話等、時代を感じる部分はあるものの、会話のユーモアやキャラクターは現代でも通じる出来だと思いました。2020/04/29
geshi
32
紙幣偽造をめぐり騙し合い・出し抜き合いが目まぐるしく火花を散らし、10頁先の展開を予想できないストーリー。「なんでそれが必要になるって分かるんだよ」と言いたくなる準備の良さも含めて、荒唐無稽のご都合主義を頭カラッポにしてついていかせる筆の力。読点の多さはパッと見で読みにくそうなのに、意外に気にならなくなっているのは、文章のリズムがいいんだな。小洒落た言い回しや、敵対する者同士でもいがみあいにならないスマートさなど、こういうのが楽しまれた時代を含めて面白がれた。2020/02/10
rosetta
29
★★★✮☆なんと1962年に出た本の再刊。映画の原作だったそうだがそれを知らずに読んでいてもずっと昭和の映画を観ているようだった。ただし宍戸錠や長門裕之ではなく自分の中では植木等とクレイジーキャッツだったがw軽快、軽妙、軽薄(笑)人間関係と言い台詞回しといい昭和のお洒落やダンディズムが満ち溢れている。ミステリにもハードボイルドにもなりうる内容なのに敢えてコメディに仕立ててあるのが小気味よい。難しい事やツッコミやコンプライアンスはなしにして古き良き時代の空気に身を浸そう!2020/01/09
Syo
22
既読だとは思うけど 都筑道夫 サザエさんもやんなぁ2023/11/18