内容説明
ここでは、誰にも居場所がある。
高齢者がゲームに熱狂する図書館、
親どうしのつながりを育む学校、
子どもがスポーツを楽しむ警察署…
あらゆる人が受け入れられる「社会的インフラ」では
何が行われ、何が生まれているのか。
1995年のシカゴ熱波で生死を分けた要因に社会的孤立があることを突き止めた著者。
つながりを育み、私たちの暮らしと命を守るには何が必要なのか?
研究を通して見えてきたのは、当たり前にあるものとして見過ごされがちな場、
「社会的インフラ」の絶大な影響力だったーー。
コロナ禍を経験した今こそ、私たちには集まる場所が必要だ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nobuko Hashimoto
31
人がリアルに集い、水平な関係で活用できる場所が社会を安定させ、時には命を救う拠点にもなりうることを多くの研究から説く。割れ窓理論のような取り締まり重視ではなく、空家や空き地を整えて緑地や農地や公園として活用できるようにすることで危険度を下げた事例や、多様な人びとが自由に出入りできる図書館の効用など。図書館の力についてはかなりの紙幅を割いて強調しているが、かのNY公共図書館でさえ、資金難で縮小傾向にあるとのこと。IT企業が地域にもたらした負の側面や社会貢献のあり方への批判も。大変興味深く読んだ。翻訳も◎2022/03/29
りょうみや
29
人の交流が幸福度や犯罪率に影響があることは知られているが、その交流は社会的インフラの整備に大きく依存しているという主張。政策や仕組みだけでは不十分。学校、公園、運動場、農園、特に図書館の役割を強調している。社会学と都市デザインに跨るテーマ。アメリカがメインなので階層、人種の話題も多い。日本もこれから移民が増えるだろうし特に持っていなければいけない視点と思える。2022/02/14
Sakie
17
頼れるのは遠くの親戚より近くの他人。生活や街の設計は気になっている。著者は社会的インフラの持つ機能と重要性を説く。人々の対面での交流を促進するインフラは、住民の交流や互助行動を増やし、結果として人々のQOLを向上させる。そのための施設を新規に建てるのではなく、既にあるインフラに交流機能を持たせる、また違う機能を持つ施設を掛け合わせるなどの取組が目覚ましい。営利目的ではなく、遠慮や警戒をせずにいることができる、異質な人々がなにかを共有できる場所って大事。市民農園や緑地でもよいのだ。大事なのは排除しないこと。2024/01/06
テツ
13
よっぽど強い意志で孤独を選択しているのでなければ、大抵のヒトはいつか必ず他者と関わりたくなる。緩やかに穏やかに他者と交われる場所って、群れを形成して生き延びてきたぼくたち(の大半)にとっては大切なんだろう。公共の施設がそうした役割を受け持つことで、孤独と孤立により自分自身を蝕まれていく方々が少しでも減るのなら、ある程度税金を投入してもこさえて維持していくべきなんだろうな。アメリカと日本ではまた事情も異なるとは思いますが、開かれた集まれる場所について考えることができました。良き内容。2023/04/30
かんがく
13
図書館、教会、カフェ、公園、プールといった「集まる場所」の重要性を社会学の研究蓄積と、著者の実体験から主張する。アメリカの本であるが、江戸時代の風呂屋や床屋とも相通ずるところがあるなと思う。「公共」について改めて考えるキッカケになった。2022/12/26