内容説明
武田信玄の父・信虎の謎の弟、勝沼信友。「山の民」として育てられたその男は、自らに流れる血の運命にのみ込まれていく。一方、罪を犯して流浪の末武田家に仕官した足軽大将の原虎胤は、その武勇から「鬼美濃」と恐れられ、外様ながら家中で重きをなしていく。乱国甲斐の統一を目指す武田信虎を挟んで、二人の男がある「呪」を背負いながら戦場を駆け巡る。最強武田のルーツを描く、女流ヒストリーテラーのデビュー長編、待望の文庫化。〔解説〕平山優。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
YONDA
10
信虎の牙となった山の民であった信友と鬼美濃こと虎胤。義兄弟の契りを交わした3人が、乱れ収まらない甲斐の国で戦いの日々を送る。信友の設定は史実とは異なるが、この設定が絶妙であり、信虎の国主としての苦悩を際立たせる。そして鬼美濃の友情とも言える信友への思いは熱い!信友最後の戦いの場面では泣いてしまった(*T^T) 落梅の賦の文庫化を心待ちにしています。2023/11/15
ハル牧
6
武田信虎の同母弟、勝沼信友を主人公に据えるなんて発想は、日常生活でどのように振る舞えば出てくるものなのだろう。その秘密を探るべく、私は甲斐国へ向かった。答えは惜しくも分からなかったが、地理感覚を少しでも獲得した土地を舞台にした歴史小説ほど、読んでいて楽しいものはない、それだけは確信できた。2022/08/15
マサオ-
4
武田信玄の父で信虎の話しを読んだのは初めてだ。読むまでは信虎は、粗暴な君主で信玄に追放されてもしかたがないと 思っていたが、そうではなく甲斐の国と言う貧しい山国が、豊かさを求めて海の有る国に出ていく、その前に自国のバラバラな勢力を纏めなければならなかった。そこに戦国ファンタジーというか、信友と言う弟と、清胤と言う家臣を重ね題名の虎と牙にし、最後は、信友の戦死、武田家の終焉まで描かれていた。合戦シーンは、たいへん迫力が有った。信友を山の民にする必要があったのだろうか。それを除いても力作だった。 2024/03/17
A.KI.
3
武田信玄の父・信虎とその弟・信友、足軽大将として武田家に仕えた原虎胤の3人を中心にした、甲斐武田家の勃興を描いた歴史小説。信友が山の民で、山の神様にかけられた呪詛にしばられながもがき、生き抜いていくという設定で、「もののけ姫」のような雰囲気もあり、史実に絶妙なフィクションが混ざり、面白い。初読みの作者でしたが題材も、その料理具合も個人的に好みでした。歴史好きにはオススメかも。2022/04/30
ポッポ
3
武田信虎は実在の人物なのに山の民という設定が面白いです。2022/04/23