内容説明
2020年1月から、東京は戦争状態に突入した。そしてその20年から21年にかけて、保健所と東京都庁の感染症対策部門の課長として新型コロナ対策の第一線で指揮を執り続けた医師がいた。本書は書く方の活字中毒でもあるその公衆衛生医が、未曾有の事態の中で経験したことを後世に伝えるためにつぶさに記録したものである。巻末では東京都の医療アドバイザーも務める大曲貴夫医師(国立国際医療研究センター)との対談も収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
83
保健所の統廃合により職員を減らされ、ペーパーレス化もシステムの一元化もできず、思考停止状態になって睡眠時間を削って働き続ける実情を読み、問題提起の書として長く読み継がれてほしいと思った。確かにこれでは戦場のようなものだろう。かなり問題点は浮彫になったと思うのだけれど、おそらくコロナが終わったら大半の国民が浮かれて苦闘の日々を忘却し、数年後にまた一から同じようなことを繰り返すような気がしてならない。そのためにも政府の上層部の方々には保健所をはじめとする医療改革をお願いしたいのだが……。2022/02/10
りんご
47
読んで満足。貴重な資料だと思います。地方の病院勤務ですが、保健所になんでも聞いて、いろんな注文つけてたように思います。次々に刷新されるコロナ対応マニュアルに追いつけてた人はいませんでした。何冊かコロナ関連の本を読みましたが、保健所の生の声はすごく感じるところがありますね。巻末は「病院から見たコロナ、保健所から見たコロナ」医療機関の医師と著者(医師)の対談。対談形式は好きじゃないのですが、興味があったら読めるものなのですね。これも発見です。2024/10/17
フム
36
コロナ禍において繰り返す感染拡大の波、そのはじまりの2020年1月から第5波の2021年9月まで、保健所の課長として第一線で指揮を取り続けた公衆衛生医師が書いた記録である。災害が起こった時、平時のシステムでは回しきれない業務が押し寄せる部署がある、それが今回は保健所だったわけである。システムを改善し、委託できる業務は外部に回しと火事場の馬鹿力で乗り越えては来たものの、それももう2年である。職場を去った仲間もいるという。今第6波の渦中で彼らが奮闘していることを思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。2022/02/09
Inzaghico (Etsuko Oshita)
20
それにしても、大混乱のなかでよくぞユーモアを維持し、笑えるエピソードを記録しておいてくれたものだ。陽性者で、二人でゆっくりしたいから早くホテルに入りたいカップルやネットゲーム対戦したいから友人と一緒に入りたいという猛者には苦笑した。著者は、リゾートホテルではないので個室だ、と説明を繰り返したという。とある小学校で「三密」は何かと出題したら「密会」「密談」「密輸」という回答があったとか。こんな高度な答えが出せる小学生の顔を見てみたい。2022/05/28
とみやん📖
17
保健所に勤務し、都の感染症対策課長も勤められた公衆衛生医による、2021年秋までのコロナとの戦いの記録。 保健所の日常業務、感染症発生時の役割、今回のパンデミックへの対応など、貴重な記録。 この国のコロナ対策が迷走していたので検証しておきたいと思っていたが、急激な状況変化に、制度やルールの改変が追い付かずに疲労を来たし、第一線の人たちがひどい目にあったというのが実情で、究極的には政治と行政の機能不全と思った。 著者の関なおみさんは、科学者でありつつ物書きとしても卓越しており、とても読みやすかった。2024/03/20
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