内容説明
寂しさを消すことができるなら、私は死んでもいい――
女が女になり、女でしかなくなる瞬間を描く問題作!
わたしの心が「寂しいの、なんとかして」と色目ならぬ物欲しげな瞳を駆使して、受動的に、男を付け狙っているわけです。(中略)
男に付け込まれるように、狙われるように、心がそういう風に巧みに振る舞っているわけです。
これがわたしの本性であるところの「受け身のストーカー」です。(本文より)
これは、性にまつわるあらゆる体験を味わい尽くす「女」の物語。
女という性をやめられず、女という性から逃れられない「生」の先には何が見えるのか?
太宰治の『人間失格』を下敷きに、「女性が女性であることで覗きこむ深淵」を照らし出す意欲作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
216
書店で気になり、図書館に予約して読みました。小手鞠 るい、初読です。太宰治『人間失格』のオマージュ小説、自己肯定感の低い女性の物語でした。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163914770 【読メエロ部】2022/01/17
fwhd8325
85
嫌な女性にも思えるし、悪い女のふりしたとっても可愛い女性にも燃える不思議な感覚です。「嫌われ松子の一生」がよぎりましたが、全く違う世界の女性なんでしょうね。難しいとは思わないけれど、感覚的にわからないことが多いようです。2022/03/05
そら
82
ひとりの女性の三章からなる手記。それは、写真と共に見つけられた手記だった。女という性と役割に目覚め始める幼少期、それを上手く利用しながら性を演じる青年期、妻という立場から一転、最期は使命感で人を包み込む。女性という生き物の、誰もが感じたことのあるややこしい感情、ただひたすらそのことを書き連ねたひとりの女性の物語。あとがきから「これはノンフィクションなのか?」と混乱する。葉湖はしあわせだったのだろうか?2022/01/22
ネギっ子gen
68
【家族そろっての食事の時間は、苦役以外の何物でもありませんでした/団欒という名の懲罰から解放されたい、そればかりを願って】 太宰治の『人間失格』を下敷きにしていると聞けば、そりゃ読むしかないよねぇ。良かった! ほんと、こういう文体が好き過ぎて。自意識過剰な“可愛いお嬢ちゃん”葉湖の物語を、3つの手記で。巻頭には、当然の如く『人間失格』の一節が掲げられ、その流れで本文を読むと、「その女の写真を三葉、見たことがある」で、小説の世界に――。うーん…『人間失格』読み直したい。何度目の再読になるのだろうか……。⇒ 2022/09/01
tenori
64
太宰治『人間失格』のオマージュ作品。「恥の多い生涯を送ってきました」で始まる第一から第三までの手記、「本当にマリア様みたいな優しい、いい子でした」との評価がある一方での破滅的な人生、主人公も葉蔵に対して葉湖。『人間失格』で描かれている男性を女性に入れ替えているだけとも言えるのだけれど、不可解で油断のならぬ(←太宰曰く)「女の性と生」が何とも奇妙な印象を残す。ジェンダーフリーの風潮に一石投じる感も。個人的には良い意味で問題作だと思う。カバーのない赤を基調にした装丁も強烈。2022/05/08
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