筑摩選書<br> 江戸の朱子学

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筑摩選書
江戸の朱子学

  • 著者名:土田健次郎【著者】
  • 価格 ¥1,540(本体¥1,400)
  • 筑摩書房(2021/12発売)
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  • ISBN:9784480015907

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内容説明

中国・南宋の朱熹の思想、朱子学は江戸時代においていかなる機能を果たしたのか――。受容とともに新たな思考が生まれてゆくさまは、従来の体制教学という理解を一面的なものとせずにはいない。とりわけ、朱子学と反朱子学の応酬は結果としてこの時代の思想表現を豊かなものにし、日本の近代化への足掛かりをも作った。本書では、朱子学の骨格から江戸時代における展開、近代化に及ぼした作用までを論じ、日本近世の知的状況を眺望する。

目次

第一章 東アジアにおける朱子学の登場
朱子学とは何か
朱子学の思想Ⅰ──「気」とは何か
朱子学の思想Ⅱ──「理」とは何か
朱子学の思想Ⅲ──人における「理」と「気」
朱子学の思想Ⅳ──学問と修養
朱子学のリゴリズム
朱子学についての通念──大義名分と尊王攘夷
朱子学の登場Ⅰ──唐宋変革論
朱子学の登場Ⅱ──北宋南宋区分論
朱子学と陽明学
第二章 江戸朱子学への道
朱子学の日本渡来
中国儒学典籍の受容のしかた
「太極」の引用
『神皇正統記』と朱子学
室町禅僧の朱子学理解の深化
仏教からの脱却Ⅰ──藤原惺窩の場合
仏教からの脱却Ⅱ──山崎闇斎の場合
構造論から修養論へ
伊藤仁斎と山崎闇斎における方向性の共有
江戸朱子学への諸ルート
朝鮮朱子学の影響
第三章 江戸朱子学の流れ
江戸朱子学の概観
朱子学と徳川政権
林家という存在
崎門という存在
第四章 丸山真男の朱子学観
丸山真男の図式
丸山図式に対する批判
伊藤仁斎と朱子学
荻生徂徠と朱子学・仁斎学
第五章 朱子学がもたらしたもの
朱子学を受け入れるということ
朱子学が導き出したもの
一、自然と規範
二、内心と外界
三、善と悪
四、個人と社会
五、道徳と欲望
六、主観と客観
第六章 朱子学と反朱子学
仁斎の「性」
朱子学と仁斎学の対立
仁斎学と闇斎学の対立
仁斎学の継承と朱子学
荻生徂徠の登場
第七章 朱子学の教理の波及
朱子学の基礎教養化
朱子学の正統論
皇統論
『詩経』観の展開
『易経』観の展開
『春秋』観の展開
朱熹の経書解釈の方法
仁斎における意味と血脈
孔子の位置づけ
第八章 朱子学の日本的展開──神道との結合
神道との結合
朱子学の鬼神論
祭祀
理と神
闇斎の場合
朱子学者と神道家
妙契
第九章 江戸後期の朱子学
幕末へ
寛政三博士と佐藤一斎
幕末の朱子学者たち
陽明学の問題
儒教の庶民への浸透と心の思想
第十章 朱子学と近代化
朱子学の理の拘束Ⅰ──価値観の問題
朱子学の理の拘束Ⅱ──自然学の問題
日本における学派並列の意味
教育の促進
近代の朱子学
近代化論との関係
朱子学のその後
おわりに

あとがき
人名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

coolflat

15
198頁。幕末の儒者広瀬淡窓はその著『儒林評』で二百年来の儒風がほぼ三変したとする。第一変。藤原惺窩・林羅山などが仏教から独立した儒学を開いた。また程朱学(道学)を開いた。中江藤樹、山崎闇斎、熊沢蕃山、貝原益軒、木下順庵等の性理実践の学が仏教を斥け聖人の道を明らかにした。第二変。伊藤仁斎と荻生徂徠が復古を説き、古義を復興した。第三変。伊藤仁斎と荻生徂徠の説が盛んとなり、程朱学が衰微し、再び宋学に帰する者も出たが、その弊害もあったので、両者を収集して折衷学と称する者が出た。当時の7、8割は折衷学であった。2023/09/09

isao_key

7
主に江戸時代の朱子学について、その受容及び反朱子学、陽明学、折衷学などを通じて日本における朱子学の影響と存在を浮き彫りにする優れた学術研究書。朱子学⇒古義学(仁斎)⇒古文辞学(徂徠)にて反朱子学が完成をみるが、江戸後期には徂徠学から朱子学へ転向した学者も多くいた。古文辞学は、各人が個性的に持っている徳をもとにして社会に寄与することによる自己完成を説きながらも、それが自己向上への実感と結びつきにくい。その点朱子学は成人は聖人を目指し、目指すことを生きがいにすることで、自己完成の達成が得られやすいという。2014/07/21

肉尊

5
近世に儒学が興隆したのは、官僚社会の発達と宗教(仏教)が幕府の統制下に置かれ、その権威と権力が後退したからであるという。闇斎・仁斎・徂徠を経る過程において、朱子学は独自の発展を迎え、中村正直のように、思想家たちを比較考察できる知的基盤が西欧の受容を無理なくさせることに結びついたということです。確かに識字率の高さや文明に追いつけという標語だけでは成し遂げられない文明開化。その背景が垣間見れた気がしました。2017/08/07

きさらぎ

5
江戸時代初期、朱子学という思想体系が輸入され学ばれたという歴史的事象が、近世~近代への日本思想においていかなる意味を持ったかを解説した本。孔子に始まる儒学を体系化したものである朱子学を、遵奉した崎門や官学化した幕府、教養としての朱子学の広がり、反朱子学として発生した仁斎学や徂徠学、また陽明学の流入などに触れながら、それらが同じ用語・問題意識を共有しながら「並列」したことが、思想の相対化を可能にし、西洋思想の受容にも繋がったとする。思想の母体として朱子学の意義を捉えようとする論法は、刺激的で面白かったです。2014/10/05

Aminadab

4
著者土田健次郎は早稲田の先生。島田裕巳さんの戦後宗教史についての筑摩選書を読んだら、巻末にこの本の広告があってつい心を引かれた。まず朱熹まで遡り、山崎闇斎をおさえ、仁斎や徂徠など反朱子学もおさえ、さらに江戸後期の朱子学の再隆盛を経て明治に至るという間口の広さ。朱子学が前近代、仁斎や徂徠が近代への橋渡しという丸山真男的な議論を相対化し、反朱子学をも含めてとにかく江戸時代に学問的にものを考えた人の頭の構造は基本的に全部朱子学でできているのだという。この主題の本ではいちばん面白く読んだ。2017/03/07

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