内容説明
人を死なせた女と男の、孤独で安全な逃亡生活――。3.11直前の少年の死をめぐる海難事故と、沖縄新基地建設反対デモ警備中の出来事が、「感染者第一号」を誰もが恐れる地で交差する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
98
向き合うべきものからは逃げ、身の安心安全は求める自己本位が、神経がおかしい。いじめの告発を隠し教師としての責任から逃げた女はある日の電話から追いつめられる。日雇い警備員の男は粗暴な性格からある現場で目障りな女性を反射的に蹴り倒し忘れた頃に女性が死亡したこと、動画が存在することを知る。彼も動画をネタに強請られ追いつめられる。逃げ場がない者同士、互いが安全な人という存在にすがり物語はそこで切れる。コロナ禍で知らず誰かを死にいたらしめる可能性はあり、概ね無責任な世間にも誰かを断罪する資格はないだろうが、如何に。2022/09/26
fwhd8325
79
後味だけでなく物語を咀嚼している時もあまり心地よく感じません。それでも、謎めいたこの男女が気になります。生きるために選んだ道に間違いがあるのだろうか。世の中から逃げるように生きることの息苦しさ。これが社会の縮図というものなのだと思います。妙にこびりつくような物語でした。2022/01/10
pohcho
57
実家の両親が亡くなって独り暮らしをする元教師の女性と 兄家族の家の蔵に住む便利屋の男。ともに東京から岩手に帰ってきたけど、土地には馴染めず、過去にトラウマを抱えている二人。コロナを異様に恐れる田舎社会の息苦しさの中で出会って一緒に暮らすようになるのだが、特に心を通わすこともなく、衝突することもなく、幽霊と暮らしているような距離感に。最後は男がどんどん儚くなっていき、鈴の音が即身仏の修行のようにも感じられた。電車が鹿と衝突して止まり、女がふいに遠野物語を思い出す場面が心に残った。なんとも言えない読後感。2023/01/26
アマニョッキ
52
コロナ禍初期の頃、まだひとりも感染者が出ていない田舎町の話。東京から移住してきた男は腫物のように扱われ不審な死を遂げたその町で、身寄りのない元教師の妙と便利屋の忍は出会う。二人には『過去に人を殺してしまったかもしれない』という負い目があり、奇妙な共同生活が始まる。とにかく暗いし息が詰まる。この閉塞感を文章でみせるのは並大抵のことではないと思う。自分に安全な人などどこにもいないのに、人とは関わっていたいというジレンマ。「感染者第1号」てあの頃の村社会では赤紙よりも恐ろしい通告やったはず…現代文学の傑作。2022/09/21
竹園和明
49
不穏な深淵に佇む男女。人を死なせてしまったかも知れないという共通項を持つ二人の、息を潜め暮らす日々。序盤から薄暗いムードで淡々と進む展開が、果たしてどこへ向かって行くのか予測がつかない。二人は常に他人の視線と陰口を感じ、そして誹りを受けながら生きている。その様子は、程度の差はあれ大なり小なり「負」を背負って現代に生きる我々の暮らしぶりそのものなのでは。生きることに窮屈そうな内向きの二人だが、唯我独尊を気取り根拠のない自信をひけらかして闊歩する愚民に比べれば、よっぽど健全で愛おしい気がした。2022/02/01
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