内容説明
猫のティブルスは、尻尾を失ったとしても「ティブルス」と同一なのだろうか――
哲学において最も基本的かつ重要な概念である「同一性」を統一的な視点から解明する。
ある事物がそれ自体との間で同一であるという関係は、どのようなもので、なぜ成立するのだろうか。形而上学・ 意味論 ・ 認識論の三つの相における 「同一性」の諸問題に取り組み、その統一理論を提唱する野心的試み。
目次
序論
1 本書のテーマ
2 本書の目標と意義
3 五つの留意点
4 本書の構成とマニフェスト
第1章 予備的考察――種別概念をめぐる諸前提
1 三つの前提
2 種別概念小史――アリストテレス・ロック・ストローソン
3 種別概念の役割――種別的同一性規準の提供
4 種別的同一性規準のちょっとした敷衍
5 種別概念の分類――実体的なものと制限的なもの
6 種別概念の射程――裸の個体の不在
7 諸前提のベクトル和
第2章 同一性関係の形而上学――相対主義から種別論的な絶対主義へ
1 根本的な疑問
2 同一性のウィギンズ的な解明
3 解明の系譜と「形而上学」
4 同一性の諸特徴
5 同一性の相対主義――ロックとギーチ
6 数え上げとパラドクス――フレーゲとギーチ
7 フレーゲの分析
8 普遍的な種別論の拒否?
9 種別的多元論
10 存在論上のデフレ主義?
11 相対主義のジレンマ
12 根拠付け問題と恣意性問題
13 同一性の種別論的な絶対主義(1)――絶対性とライプニッツの法則
14 同一性の種別論的な絶対主義(2)――架橋原理と同一性規準
15 相対主義から種別論的な絶対主義へ
第3章 同一性表現の意味論――バトラーの区別を擁護する
1 バトラーの区別
2 同一性表現の関係項
3 チザムの解釈
4 バクスターの解釈
5 ギーチ的な意味論上の相対主義
6 カプラン的意味論から非指標的文脈主義へ
7 同一性表現の非指標的文脈主義
8 内包オペレーターの不在?
9 パラメーターを措定する根拠
10 非指標的文脈主義における理論的恩恵
11 ギーチの固有名論
12 固有名の指標主義
13 同一性言明の真理条件と顕性種別概念
14 バトラーの区別を擁護する
第4章 認知的な個別化の認識論――認識的な種別概念主義の一形式
1 アリストテレス的なテーマの継承
2 認識的な種別概念主義――ストローソン・ウィギンズ・ロウ
3 二種類の反論
4 どれであるかの知識
5 認知的な個別化のラッセルの原理
6 証拠としての種別概念の知覚
7 叙実主義的で証拠主義的な種別概念主義
8 第一の反論への応答――証拠の叙実性
9 第二の反論への応答――「個別化」の多義性
10 認識的な種別概念主義の一形式
第5章 個体の形而上学――多元性・構成・統一性
1 種別的多元論再訪
2 ベイカーの構成主義
3 構成主義への不満
4 形相による基礎付けとしての構成
5 メレオロジカルな統一性としての構成
6 質料形相論的な構成主義(1)――その定義と貢献
7 質料形相論的な構成主義(2)――疑問への応答
8 形相の輪郭
9 ウィギンズ的な解明への逆照射
10 多元性・構成・統一性
付論 概念主義的実在論に向かって
結論 「同一性」の種別的親和性アプローチ
あとがき
参考文献
テーゼ索引
人名索引
事項索引