内容説明
ほんとうにうまい大根は、
「ほんとうに、うまいねえ」
むかし、三井老人が、よくいっていたものだ。(本文より)
四季折々の味を慈しみ、土地土地の食を堪能する、たべものエッセイの神髄。
幼き日の海苔弁当の思い出から時代劇の食べもの、卵のスケッチ、そして大根の滋味に目覚めるまで。あるいは東京下町から奥多摩、仙台、湯布院、さらにフランス、スペイン、インドネシアまで――。古今東西の味と人をめぐるおいしい話の数々を、時代小説の大家にして食エッセイの達人が味わい深く描く。
〈巻末対談〉荻昌弘×池波正太郎「すきやき」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Shoji
30
食にまつわるエピソードを織り込んだエッセイ。旬の食材を産地でシンプルな味付けで頂くのを是としていらっしゃいます。旬の食材、地産地消に強いこだわりがあるわけでなく、それが自然な生活スタイルのようです。粋でいなせです。ファーストフード、通販お取り寄せ、ウーバー、コンビニフードといった食のスタイルがなかった時代の方が、随分と豊潤だったようです。2024/12/21
テツ
12
池波正太郎による食にまつわるエッセイ。氏が生きた一昔前とは異なり、現代日本における外食は基本的に安定して美味しく品質もそれなりに高く安全で尚且つ安いという、文句のつけようがないクオリティではあるのだけれど、よっぽどの高級店でない限り大抵のお店は画一的で(個人店であっても)安心して美味しく食べられる代わりにワクワクするきもちは皆無だよな。それは決して悪いことではないのだけれど、食べるという行為で小さな冒険と未体験の快感を味わえていた時代が少し羨ましくなってしまう。2022/09/03
剛腕伝説
8
晩年は池波正太郎も大分、食が細くなってくる。 往年の豪快な食べっぷりが影をひそめ、少し寂しく感じる。2024/02/05
さっちゃん
7
池波正太郎(1923〜1990)さんの晩年頃のエッセイをまとめたもの。『食卓の情景』(新潮文庫)が油の乗っている頃の食いしん坊な氏の情景ならば、本書は歳を重ねて食に翳りが出てきた風景であろうか。若い頃は様々と食し、海軍にとられてからは食欲に埋まり、仕事をしながらひたすら食べていた美食家が、「今日は食べすぎた」といって胃腸薬を下す場面は老いの悲哀を感じる。まあ氏自身が質素な食事に転換しようと試みているので、『食卓の情景』では夜食にかつ丼を食す豪傑も、本書では松の実を齧りながら酒を呑む。歳を経るという事か。2025/02/19
hitotak
7
国内外で食べた料理や店主達との思い出等、食べ物にまつわるエピソードが書かれたエッセイ集。著者は新国劇の座付き作家だったこともあり、芝居の食事の場面についても書かれているが、中でも辰巳柳太郎が寝ている病人役を演じている際、(他の俳優たちの殺陣の最中に)客の目を盗んで舞台でかつ丼を食べていた、という話に驚いた。三階席で観ていた著者が見咎めると、空腹で我慢できず、と弁解したそう。他にも「仙台にて」で紹介された店のひとつ、河童亭は私も学生の頃に著者同様トナカイを食べ、巨漢の店主を見かけた記憶があり、懐かしかった。2024/07/14
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