内容説明
社会経済的基盤を失って故郷を離れ、新しい地で居場所を作り上げなければならないチベット難民は、意外にも単なる脆弱な存在ではない。彼らはどのように生計を維持し、どのように人間関係を結んでいるのか、1年以上にわたるフィールドワークから難民たちの生き抜く姿を明らかにする。
常に変化しているという不確実性の中に生きる彼らは、むしろ物事をうまく操ることで未来を好転させられるという感覚から偶然に身を委ねる「賭け」の生き方にたどり着くほか、家族以外と築く仲間関係に影響を受けて第三国への再定住を決意する。モノやカネとともに環流する彼らの姿は、「難民とはなにか」を問い返してくる。
目次
序章 「難民」を生き抜くために
第1章 インドにおけるチベット難民とダラムサラ―調査地概要
第2章 「ダラムサラ・インターナショナル・エアポート」―移動に託す希望
第3章 つながりを作る―地域という集団範疇と共同性
第4章 負債のネットワーク―電子貨幣クマルを介したつながり
第5章 偶然を資源化する―賭け続ける経済活動
終章
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
sayan
31
学術書とは到底思えない刺激的な内容とスピーディな展開に非常に質の良い社会派小説を手にした気分。インド/中国で生活するチベット難民に焦点をあてる。彼らの脆弱性を否定し自立と依存のバランスで成立する共同性の描写は興味深い。特筆すべきは、彼らの一見すると行き当たりばったりで、お互いの関連性がない行動を、不確実な世界に生きる術として「いつか何かの役に立つかもしれない」世界観(=共同性)として再構築する箇所。ただし、その共同性や関連性は刹那的で、その描写は、読み物として読者を本書にひきつける大きな魅力となっている。2020/10/19
BLACK無糖好き
24
北インド・ダラムサラにおけるチベット難民の人類学的研究の成果物。当地のチベット難民は、1960年代からインドへ越境しチベット難民社会の基盤を築いてきたシチャと呼ばれる人たちと、1980年代以降越境してきたサンジョルと呼ばれる人たちがいるようだ。この二つの集団の関係性はあまり良くない。後者は一人で越境してきた者が殆どで難民社会からも歓迎されていない模様。本書はこのような状況にあるサンジョルの人たちの実態に迫り、人的ネットワーク構築の術やその生存戦略を解明する。これぞフィールドワークの賜物。2021/05/27
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