内容説明
なぜ地方分権改革は進まないのか。理論とデータで明らかになる地方自治体の姿。
地方分権改革に伴い成立した「条例による事務処理の特例」によって国と地方が「対等・協力」関係に変化しているにもかかわらず、市町村への権限移譲は地域や政策によって大きく異なっている。本書はデータ分析を通じて、知事の得票率や党派性、地方議会における与党勢力と会派構成、都道府県の財政状況が権限移譲の進展に影響を及ぼしていることを解明する。全都道府県を対象とした観察データからゲーム理論で仮説を導出し、計量分析で要因を析出し、事例研究で変数の作用を検証することで、地方自治体間の差異を客観的に比較し、行政学に新たな光を当てる。
目次
47都道府県の地方自治
目 次
序章 本書の目的と課題
1 分権改革と権限移譲
2 本書の分析レベル
3 本書の構成
第1章 2000年の地方分権改革とその後
1. 1 地方分権改革の開始
1.1.1 機関委任事務の「整理合理化」から「廃止」へ
1.1.2 地方分権推進委員会の活動
1. 2 地方分権時代の到来
1.2.1 機関委任事務の廃止:中央-地方関係の再編
1.2.2 市町村合併:地方政府の行政体制の再編
1.2.3 三位一体改革:地方政府の税財源の再編
1. 3 第2 次地方分権改革の開始
1.3.1 地方分権改革推進委員会の活動
1.3.2 地域主権改革
第2章 地方政府における権限移譲の仕組み
2. 1 事務処理特例制度の運用状況
2. 2 事務処理特例制度による権限移譲の特徴
2. 3 事務処理特例制度による権限移譲の流れ
2. 4 事務処理特例制度による権限移譲のアクター間関係
第3章 分析枠組み
3. 1 先行研究の検討
3.1.1 分権改革をめぐる諸議論
3.1.2 都道府県から市町村への権限移譲
3. 2 役割分担の選好による権限移譲モデル
3.2.1 権限移譲モデルの基本仮定
3.2.2 4 つの権限移譲モデル
3. 3 権限移譲の政策選択メカニズム
3.3.1 提案主体による権限移譲の政策選択
3.3.2 長期的関係における権限移譲の政策選択
3. 4 本研究の仮説:地方政府の権限移譲を規定する要因
3.4.1 権限移譲を規定する環境要因
3.4.2 権限移譲を規定するアクター要因
第4章 地方政府における権限移譲の政策選択:検証Ⅰ
4. 1 データと分析手法
4.1.1 データ
4.1.2 分析手法
4. 2 単年度データによる分析結果
4.2.1 回帰分析による権限移譲の規定要因の析出
4.2.2 比較分析による権限移譲の規定要因の検証
4. 3 パネル・データによる分析結果
4.3.1 財政状況から見た権限移譲の規定要因
地方政府の財政健全度と権限移譲
地方政府の歳出・歳入と権限移譲
4.3.2 政治状況から見た権限移譲の規定要因
地方政治と権限移譲の関係
地方政府の政治財政状況と権限移譲の関係
4. 4 小括
4. 5 [補論]地方政府における権限移譲の政策選択:データ
4.5.1 都道府県別の政治状況
4.5.2 都道府県別の財政状況
4.5.3 事務処理特例制度の運用状況
政策分野別の権限移譲に見られる特徴
都道府県における権限移譲の変化の推移
4.5.4 まとめ
第5章 地方政府における権限移譲の政策選択:検証Ⅱ大阪府における教職員人事権の権限移譲の事例分析
5. 1 大阪府における分権改革と権限移譲の取り組み
5. 2 大阪府から豊能地区3 市2 町への教職員人事権の権限移譲
5. 3 権限移譲における政治的アクターの狙い:首長主導の教育改革
5.3.1 権限移譲に関する大阪府議会議員調査
5.3.2 プロジェクトチームの成立と解散
5.3.3 地方議会における教職員人事権の権限移譲をめぐる論争5
5.3.4 首長主導の教育改革に関する諸議論
5. 4 小括
5. 5 [補遺] 全国における事務処理特例制度による権限移譲の活用事例
終章 本書の結論と含意
1 得られた知見
2 含意と貢献
あとがき
参考文献
索 引



