内容説明
フィールドワークの成果と理論的考察を総合して、イヌイト民族誌に新たな地平を拓く野心作。
伝統的な移動活動であるナビゲーションの日常的な実践を軸に、在来知、大地との絆、環境問題、グローバリゼーション、先住民運動など、イヌイトが直面する問題に斬新に切り込む。(スチュアート・ヘンリ)
目次
序章 イヌイトのナヴィゲーションをめぐる諸問題
第1章 極北人類学の功罪―「もう一つのパラダイム」という名の神話
第2章 交差点としての民族誌―文化の綜合的分析へむけて
第3章 「大地」との絆―ナヴィゲーションの制度的背景
第4章 「イヌイトのやり方」の戦術―ナヴィゲーションをめぐる生活世界
第5章 生活世界の現実―戦術のイデオロギーの構築と再生産
終章 日常的実践のダイナミクス
感想・レビュー
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三条院アルパカ
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私が昔教養科目で学んだ文化人類学はフィールドワークの結果を記号化・類型化して上から目線で分析したものだった。この本ではイヌイトが雪原でのナビゲーションでアドホックな経験知の集積を重視していることを紆余曲折の末理解するに至るまでに、イヌイトの物の考え方や価値観まで掘り下げる必要があったことが説得力をもって語られている。異文化との交流による生活様式の変容そのものも文化と解し、その根底に流れ続ける物の考え方を探るべきとするのは、ある意味文化の画一化が進む中で人類学が生き残るために不可欠の考え方なのかもしれない。2016/11/16