戦国時代と一向一揆

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戦国時代と一向一揆

  • ISBN:9784909658555

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内容説明

高校の日本史の教科書では一向一揆は単にその名称が書かれているだけで、その具体的な内実が説明されることはほとんどなく、仮に説明があったとしても、浄土真宗本願寺派の門徒が中心的な役割を果たした一揆だった、という簡略な記述にとどまることが多い。
しかし、門徒らの行動の源泉は必ずしも信仰にもとづいたものばかりではなかった。
では戦国の時代とほぼ時期が重なる一向一揆とはそもそもどのような闘争で、構成員らを突き動かしていた行動原理とはなんだったのか。

本書は一括りでは捉えきれない一向一揆の多様さと面白さを、地域や時代、そして宗主(八代宗主・蓮如~十一代宗主・顕如)の変遷とともに追い、明らかにする。一向一揆入門に最適の書。

【一向一揆は、戦国時代の幕開けに活躍した八代宗主蓮如の時代に始まり、戦国末期に織田信長と死闘を繰り広げた十一代宗主顕如の時代に終結する。まさに、戦国時代と一向一揆の時代は、ほぼ重なっているのだが、この間の宗主(蓮如・実如・証如・顕如)の立場や彼らを取り巻く社会情勢は大きく変遷しており、それは一向一揆にも影響を及ぼしている。そのため、各宗主の時代に即した一向一揆について、その特徴を提示しなければならないと考える。】......「はじめに」より

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

83
信長絡みの話に必ず出てくる本願寺と一向一揆だが、歴史の敗者として添え物扱いされていた。しかし日本の政治に大きな影響を与えた宗教反乱として、真剣に研究すべきなのは確かだ。一般向け概説書すらなかったので、コンパクトな通史の登場は日本史の空白を埋めてくれる。小説や漫画では宗主の指令に忠実な固い団結を誇る組織として描かれるが、実際は内紛が絶えず粛清が行われたり各地の門徒が勝手に動くなど統制に苦慮する姿が生々しい。民衆が権益のため宗教をドライに利用するなど、従来の常識を覆す分析は戦国期を見る目を大きく変えてくれる。2021/08/07

さすらいの雑魚

42
第六天魔王の覇業のまえに立ち塞がった怨敵。法主顕如率いる石山本願寺と一向一揆の入門書。全体像を描いたものは目にした事が無かったのでありがたし。一向宗と言えば信仰の絆と鋼の規律で統率された狂信者の群れが武家支配打倒を目指し武装蜂起ってヤバくて強面なイメージでしたが、本作で詳述される内実を見てると中央政界での駆け引きの都合と出先末寺の既得権益や在地の勢力の利害関係の間で右往左往する宗主坊官のバタバタ具合が少しユーモラスで親しみが湧く的な♪信長の忍びや信長の野望の副読本に良い♪2022/01/31

nagoyan

20
優。「はじめに」で指摘されるように、まず戦国期の本願寺教団は近世寺檀制度確立後の「宗派」概念では理解できない。そして「一向一揆」とされるものも時代、地域による偏差が大きく、必ずしも宗教的信条が一揆の理由ではなく、本山・宗主に忠実だったわけではない。一章では戦国期幕開けに位置する蓮如と主として北陸の一揆、二章では実如と永正の錯乱の時代、三章では証如と教団の分裂、天文一揆と武家への屈服、四章では顕如と織田政権との抗争と体制化。地元利益を中心に結束する「一揆」と、教団の集権化を進める本山・宗主とは原理的に対立。2023/03/12

六点

20
つい数年前まで、いや、現在でも創作物では「やゔぁい新興宗教団体もどき」みたいな描かれ方をされる「一向一揆」である。がこの本では、蓮如上人から顕如上人に至る歴代の法主の時代ごとに、多様な姿を見せる「一向一揆」の姿が描かれている。在地領主の権益を侵す外来領主を追い出したり、史料が無いのでなんで起きたかわからないが、大変な争乱になったり、法主の制止を振り切ったり、あるいは、法主の許可無く和議を行うなど、「在地の論理」に右往左往する本願寺の姿は、少しく滑稽味を感じる。多様な姿が広まり研究が深化すれば良いなと思う。2021/07/17

MUNEKAZ

18
戦国期の一向一揆の通史。蓮如から顕如まで歴代の宗主ごとにまとめてあり、一揆の内実や変遷がよくわかる。宗主の号令の下、宗教的情熱に突き動かされた門徒衆みたいな、ステレオタイプの一揆像は変わること請け合いの内容。著者も指摘するように、宗主への絶対服従を求める本願寺の法義と、朋輩のつながりを基にする一揆の論理は本来相容れないもの。宗主の命を無視し、闕所地の獲得に勤しむものや対織田戦に立ち上がらないものが出るのも必定か。「他力本願」を唱える組織が、自力救済の世で領主になってしまった矛盾を感じるところである。2023/01/14

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