内容説明
本書は、読売新聞連載「時代の証言者 志村ふくみ」(2013年)をもとに新たに書籍として執筆され、志村の聞き書きを中心にまとめた初の本格的な評伝である。
構成は大きく 2 部に分かれ、前半の「時代の証言者」は、新聞連載のための長時間にわたるインタビューや取材をもとに、当時の記事に大幅加筆して再構成。
後半「妣への回帰~新たな民芸を求めて」は、連載終了以降から 2020 年まで、様々なテーマで志村に行ったインタビューや取材を中心に構成し、資料をもとにした解説も充実。
染織の学校「アルスシムラ」の開設や新作能「沖宮」をめぐる作家・石牟礼道子との絆など、近年の志村の活動にも触れている。
志村ふくみのライフストーリーを知るための必読の書である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
10
「植物の命の色をいただく」「この手仕事を伝えたい」読売新聞連載「時代の証言者 志村ふくみ」(2013年)をもとに新たに書籍として執筆され、志村さんの聞き書きを中心にまとめた初の本格的な評伝。連載終了以降から2020年まで、様々なテーマで志村に行ったインタビューや取材を中心に構成し、資料をもとにした解説も充実。志村さんのこれまでのライフストーリーが展望できる。2023/11/20
takakomama
4
「読売新聞」の連載と聞き書きをまとめた評伝。民藝の人々との出会いや言葉は貴重です。開発や温暖化で植物などの自然が減ってしまうのは淋しいです。染色の学校「アルスシムラ」を開校した時、著者は89才、娘の洋子さんは64才。その情熱と行動力を見習いたいです。私も、まだまだ頑張れると思いました。2022/02/27
uralaka
3
志村さんの業績がトータルに理解出来た。
夏野
1
染織作家・随筆家、志村ふくみへ聞き書きと評伝。読売新聞に連載されたものをまとめ、増補したもの。志村ふくみの生い立ち、家族の影響や絆、染めに対する信念など、丁寧に描かれていて、読み応えあり。カラーで染めの写真など多数収録されていて、見応えと読む際の参考にもなりました。巻末に略年譜や参考文献もあって丁寧な作りで良かったです。2022/12/24
お抹茶
0
志村ふくみのインタビューと評伝をまとめた本。人生を辿りつつ,代表作や民芸や後世への想いを語る。印象的な表現は次の三点。日本には茶色や鼠色といった「ケ」の複雑な影の色が多様にあり,西洋音楽にはない無限の半音の世界の色をよく使う。鮮やかな赤に夜叉や玉葱で茶を掛けた蘇芳を使うことで,いろいろな面が出てくる女の赤を表現できる。宇治十帖の「色なき色の世界」を見てみたいというのが米寿過ぎの境地。装丁も美しく,スピン(栞紐)が2本あってそれぞれ品の良い色。全体的に彼女の作品のようなセンスが漂う本。2023/02/18