内容説明
大澤真幸・熊野純彦両氏の責任編集による新たな叢書、ついに刊行開始!「自らの思考を極限までつき詰めた思想家」たちの、思想の根源に迫る決定版。21世紀のいま、この困難な時代を乗り越えるには、まさにこれらの極限にまで到達した思想こそ、参照に値するだろう。
本書は、ニーチェの道徳批判に焦点を当てる。ニーチェは道徳を批判した。今ある道徳を改善するためではない。われわれの道徳意識を「キリスト教道徳」と規定し、これに対して一切の価値転換を迫る。では、なぜ批判したのだろうか。正義や同情をどう考えればいいのだろうか。主として『道徳の系譜学』を中心に読み解き、ニーチェ哲学の魅力と射程に迫る。
目次
第一章 歴史と系譜学
第二章 価値転換とルサンチマン
第三章 良心と禁欲
第四章 道徳批判と遠近法
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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『道徳の系譜学』を、①「系譜学」とは何で、なぜそれを使って道徳を考えるのか、②「ルサンチマン」概念は、我々がその内部にいる(と思っている)だけで、相当に無理があるようにも見える(たとえば「偽善」と違って(奴隷)道徳を駆動するルサンチマンはその起源が忘れられていなければならない)そうした無理が、ニーチェの中でどう描かれているか、③きわめて無理のある「ルサンチマン」は、しかし、奴隷を従わせ、貴族を従わせ、普遍的道徳を生み出したということがニーチェによって分析される、どのような戦略で無理を乗り越えたか、2022/05/03
毎日が月曜日
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再読。2022/11/16
メガネ@glglspectacles
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ルサンチマンについての早分かり的な解説(僧侶が行った価値基準の転換によって、キリスト教的な奴隷道徳が支配的になり云々)をしたあとで「こういう早分かりの解説が成立するのって、我々が自分のもつルサンチマンを駆動させながら読むからだよね」と言って「そもそも価値基準の転換はいかにして行うのか」「価値基準を転換させる力をもった僧侶でありながら、同時に、道徳を心から信仰する奴隷であることはいかにして可能か」という問いをネチネチ論じるところが面白かった。 再読してしっかりと議論を追いたい。2022/07/23