RE-END 死から問うテクノロジーと社会

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RE-END 死から問うテクノロジーと社会

  • ISBN:9784802512299

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内容説明

──私たちは、よりよく死ねるだろうか?

死を問うことは、近現代が築いた社会を問い直すことでもあります。これまでいくつもの未来予測が描かれてきましたが、災害やパンデミックといった不可避の混乱に陥ったとき、どれだけ技術が進化しても生物に降りかかるものが「死」であり、多様な視点で文明を根底から見直す必要性に私たちは気づいたはずです。

いまや故人のデータはネットワーク上に残り、データ上で私たちは“死ねなくなる”ともいわれています。AIが過去の偉人をコピーしたり、バーチャル空間で死者と再会したりすることも可能な時代となりました。少子高齢化に伴い、住む土地への帰属意識や共同体が変化し、墓や葬儀のシステムも見直されてきています。そんな現代で、私たちは「死」とどう対峙していくのでしょうか。自分がいつか死ぬとき、大切な人が亡くなるとき、これからの時代では何が変化し、何が遺されるのでしょうか。

本書では、気鋭のマンガ家による描き下ろしのショートマンガや絵を織り交ぜながら、民俗学や人類学、情報社会学や人工知能研究といった多様な論者と、「死」という切り口からこれからのテクノロジーと社会を読み解いていきます。個人では向き合いづらいテーマであるからこそ、皆の知見をヒントに人間観を捉え直し、死生観のアップデートを試みましょう。死と向き合うことは、いまの生をとらえ直すことにもつながります。死の定義が変わるAI時代、本書が生と死のウェルビーイングを捉え直す契機となるはずです。

特別描き下ろし
【表紙・巻頭マンガ】五十嵐大介/【絵】諸星大二郎/【マンガ】しりあがり寿/【マンガ】うめ(小沢高広・妹尾朝子)/【マンガ】ハミ山クリニカ+原作・宮本道人

寄稿
ドミニク・チェン/畑中章宏/石倉敏明/岡本亮輔/折田明子/水野祐/庄司昌彦/橋迫瑞穂/栗原聡

インタビュー
玉置妙憂/木村光希/Whatever(川村真司+富永勇亮)/小門穂/尾藤誠司

対談
しりあがり寿×畑中章宏/宇川直宏×山川道子

目次

序章
【マンガ 】「遠野物語」より 五十嵐大介
はじめに 塚田有那

1章 RE-END 死と生の境界線を引き直す
他者の死生を喚起するテクノロジーに向けて  ドミニク・チェン(情報学研究者)
21世紀の「死者の書」―死者の公共性をめぐって  畑中章宏(民俗学者)
生と死をふくむ風景―神話から考える未来の死との関係 石倉敏明(人類学者)
【絵】すべてここから生まれここへ還って行く  諸星大二郎

2章 死の軌跡 わたしたちは死とどう対峙しているのか
葬儀のゆくえ─日本人の宗教観と未来の葬送 岡本亮輔(宗教学者)
看護と宗教をつなぐスピリチュアルケアの実践 玉置妙憂(僧侶、看護師)
死者をおくる「おくりびと」―納棺士の仕事と現在 木村光希(納棺士)

3章 死後労働 AIが故人を再現する時代へ
「死後労働」が始まる時代─死後データの意思表明プラットフォーム「D. E. A. D.」の挑戦 Whatever 富永勇亮・川村真司
AIは作家を復活させることができるのか? 栗原聡(人工知能研究者)
【マンガ】ようこそ! わたしの葬儀へ! うめ 小沢高広・妹尾朝子

4章 死後のアイデンティティと権利 個人データはのものか
遺されるデータとアイデンティティ 折田明子(情報社会学者)
死者のデータと法制度─個人データ、肖像・パブリシティ権、デジタル資産などの観点から 水野祐(弁護士)
パーソナルデータは社会の資源になりえるか? 庄司昌彦(情報社会学者)
ゲーム世界における〈他者〉とAI─「遊び」についての議論を手がかりに 橋迫瑞穂(宗教・ジェンダー社会学者)
【マンガ】デジタルヘヴン  マンガ・ハミ山クリニカ+原作・宮本道人

5章 意思決定 医療の現場に生じる多様な選択
科学が変容させる死生観と倫理の境界 小門穂(生命倫理研究者)
死に直面する医療と意思決定のゆくえ 尾藤誠司(医師)

終章 死とテクノロジーのゆくえ
【対談】21世紀、死者はどこへ向かうのか しりあがり寿(マンガ家)×畑中章宏(民俗学者)
【マンガ】「国が富士山のふもとに天国つくるってよ。」 しりあがり寿
【対談】死を超越するライフログ  宇川直宏(DOMMUNE)×山川道子(Production I.G)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ta_chanko

19
デジタル時代における「死」のあり方、故人情報の取り扱い方、データ資産も含めた相続のあり方、葬儀のあり方、死後労働の是非、故人の意識をコンピュータに保存することの是非…。そもそも「死」という現象の主体は故人(本人)なのか、遺された人々なのか…。コロナ禍もあり、盛大な葬式から密やかな家族葬へと急速に流れが変わってきている。墓仕舞いから樹木葬という流れも。これからむかえる少産多死の時代に、人々はどう対応していくのか。日本の分岐点。2022/01/04

かやは

10
人間がどれだけ文化を発展させても決して逃げられない「死」。しかし、それを取り巻く環境はどんどん変化していく。 現在の価値観には科学の影響が多分にある。過去の価値観異なる部分をでどう捉えていくか。 個人が合理的な判断ができるという前提を、疑っていく必要がありそうだと思った。 死後の労働も実現化しそうではあるが、それは現役世代を圧迫するのではないか。 人口が減少していく日本ではいち早く始められるのかもしれない。 生前のライフログを死後受け渡すことを前提とした配分はどうだろう。2023/10/04

木ハムしっぽ

6
AIで復活する美空ひばりや手塚治虫の新作発表に、興味と同時に違和を覚えたことをきっけけに手に取った本書。現代のデジタル時代における死をテーマに、民俗学者、宗教学者、AI研究者、弁護士など様々な専門家の寄稿や対談を扱っている。SNSを始め、あらゆるデジタルデータが死後にも存在し続ける現代において、死者のアイデンティティや著作権についての論考が興味深かった。2025/01/08

エリンギ

6
本書を読んでいて、「あれ?なんのために生きてるんだっけ」と自分の現在地がわからなくなる瞬間があった。死について考えることが生について考えることでもあるからだと思う。どうやって死に向かい、どうやって死に、どうやって死後を送りたいかが明確になれば、おのずと生き方についても定まってくるのかもしれない。ウェルビーイングはウェルデッドを充実させることこそを前提にすべきだという、畑中章宏さんの意見に共鳴した。2022/02/20

さしみ

4
死とテクノロジーのウェルビーングな関係について、各章最先端の有識者が語ります。各章冒頭にコミックが挟み込まれ、またウェルビーングを追求する姿勢が根底にあるためか、読後感は決して暗くなく、明るさが残るものでした。知的好奇心が刺激を受ける心地良さもあり、各専門家の論説をより深く知りたいとも思いました。2022/01/10

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