間違った医療 - 医学的無益性とは何か

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間違った医療 - 医学的無益性とは何か

  • ISBN:9784326102952

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内容説明

医学的無益性とは、医学的に見て患者に対して回復という利益をもたらすことができない試みのことを指す、医療倫理学の重要な概念である。本書ではよく混同されがちな資源配分の問題との違いを明確に論じ、高度に発展した現代医学のもとにあって医療が本来目指すべきゴールとは何かという観点から、あるべき議論の方向性を示す。

目次

第2版への序
謝 辞

第1章 これは医師がなすべきことになっているのか?
 1.なぜ医師はそのようなことをするのだろう?
 2.歴史的見地から見た医学的無益性
 3.医学的無益性を定義する
 4.さらなる医学的無益性の定義──量的側面について
 5.さらなる医学的無益性の定義──質的側面について
 6.無益な治療の神話的な力

第2章 Noと言うことが難しい理由

第3章 Noと言わなければならない理由
 1.患者の自律尊重と医師の裁量との境界
 2.医療費
 3.技術の間違った使い方
 4.自律の華々しさ
 5.共有地の消耗
 6.単一争点支持者の主張のバランスをとること
 7.不適切かつ秘密裏の虐待の抑制

第4章 「できることをすべてやってほしい!」と言う家族
 1.なぜ家族や患者を愛する人は「できることをすべてやってほしい!」と言うのだろう?
 2.無益な治療への要求に医師はどのように応えるべきだろうか?
 3.無益性を超えてケアの倫理へ
 4.「できることをすべてやってほしい!」と言う家族に医師はどう応えるべきだろうか?

第5章 無益性と資源配分
 1.資源配分と無益性、それぞれの含意
 2.無益性と資源配分に対してますます大きな注意が払われている理由
 3.無益性と資源配分に共通の特徴
 4.無益性と資源配分のそれぞれに固有の特徴
 5.無益性と資源配分の心理学的なルーツ

第6章 訴訟にあふれた社会における医学的無益性
 1.法律家に対する恐れ
 2.法に対する恐れと法律上の神話
 3.判決と医療

第7章 医学的無益性の倫理的な含意
 1.医療の目標
 2.最も弱い倫理的態度──医師は無益な治療の提供を控えることを許されるべきである
 3.穏やかな倫理的態度──医師は無益な治療の提供を控えるよう促されるべきである
 4.強い倫理的態度──医師は無益な治療の提供を控えるよう義務づけられるべきである
 5.反論と回答
 6.私たちの倫理規範

第8章 現状とあるべき姿──患者の皆さんへ
 1.現 状
 2.あるべき姿
 3.現状からあるべき姿へ

第9章 現状とあるべき姿──医療従事者の方々へ
 1.現 状
 2.あるべき姿
 3.これからどこへ向かうのか
 4.現状からあるべき姿へ

第10章 肝心な点──医学的無益性
 1.医学的無益性なるものは存在するのだろうか?
 2.理論上の医学的無益性
 3.医学的無益性の神話的な力
 4.無益性とは区別されるもの
 5.量的および質的な医学的無益性
 6.量的な医学的無益性に関する一つの類推的議論──プラセボ
 7.倫理的含意と医師の義務
 8.効果が明らかでない治療に対する患者の権利

第11章 医学的無益性──私たちはいまどこにいるのか?
 1.反論と回答
 2.次のステップ

原 注
訳 注
監訳者あとがき[林令奈]
人名索引
事項索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Iwata Kentaro

13
誤診とか、less is moreの話と思いきや、medical futilityの話だった。この議論はぼくが研修医の頃からあったが、未だにこういう議論が成立するということは米国でもやはり悩みは同じなのだ。が、米国では学的解答を追求し、法的根拠やシステムに落とし込もうとするのに対し、日本では「現場目線」でなあなあで対応する、という違いがあるだけで。「できることはすべてやってほしい」問題、あなたならどうしますか、、、、2022/04/08

ヒナコ

10
本書は、安楽死・尊厳死のなかでも「延命治療の差し控えと中止」という消極的安楽死・尊厳死を扱ったものと分類できる。しかし、一般に議論されている消極的安楽死・尊厳死と本書の議論はかなり文脈を異にする。それは、本書が扱う問題が、「無益な治療」論と呼ばれるような領域だからである。それは、その治療を試みても有益ではない場合に、治療を差し控えたり中止したりするという状況であり、患者の自己決定を中心に据えた「延命治療の手控えと中止」とは文脈を違えるものである。→2022/03/12

BATTARIA

2
原発事故やコロナ禍で、日本人の科学リテラシー不足を云々する人が多くなったけど、大事なことは知識や法則や公式を理解するのではなく、その科学特有の本質をつかむこと。医学であれば、医療行為は患者の利益のためにやることで、特定の臓器や身体部位の疾患を治すためではないこと、医療の可能性は無限ではないことなど等を、医療従事者ではない一般人が理解できていれば、医療をめぐるトラブルも確実に減るはずなのに、ほかならぬ医療従事者がわかっていない。それがいまのコロナ禍の根本的宿痾だ。2021/10/05

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