内容説明
司法と行政の頂点を極めた唯一の政治家・平沼騏一郎。東大を首席で卒業後、能吏の聞こえ高く、大逆事件を処理し、検事総長、大審院長を歴任。政界進出を目論み右翼団体・国本社を組織する。軍人らの期待を集め、日中戦争下、首相に就任。日米開戦後は重臣、枢密院議長として和平派へ。機会主義と映る行動から右翼に銃撃され、自宅放火にも遭った。天皇崇拝の国家主義者、陰謀家、A級戦犯として断罪され続けた平沼の実像を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
77
若手司法史研究者による評伝で、「複雑怪奇」の発言で知られる元首相の多面性を知ることが出来る。平沼は極めて優秀な保守の人のようだ。この保守には2面あり、まずは現体制のもつ秩序や安定を維持するため、制度を守ろうとすること。天皇主権論者であるが、明治憲法下の天皇制を維持するため三権分立を重視したという指摘は興味深かった。現代につながる刑法運用、検察制度改革を行ったというのも初めて知った。もうひとつの保守は国本社の活動で知られる「皇道」などの伝統的価値観重視。ただしこちらは極めて観念的な印象。中身が見えないのだ。2021/11/24
みこ
35
名前は知っていても実像はあまり知らなかった人物であった。一方的な裁判とはいえ、A級戦犯とされたのだから、開戦に主導的な人物だったのだろうな程度の認識だった。当然のことながら検察出身ということも知らず。実際はそこまで開戦や戦線拡大にノリノリだったわけはなく、国家主義の側面で裁かれたようで、改めてA級戦犯というものへの認識や彼らが合祀されているという理由で忌避される靖国神社への認識について考えさせられた。 2021/11/12
nagoyan
17
優。個人的には彼に関心がなかった。魅力がないと感じていた。読後、その印象は変わったか。全く、変らなかった。彼は東大首席卒業であるが、司法省の給費生であったため不本意ながら司法省に入る。山縣系官僚と距離をとったことが、政党政治の黎明期に会って、彼の出世につながる。司法官僚として、刑法改正、大正刑事訴訟法等に活躍。その一方で、自派で司法省、検察を固める。第一次大戦後の政治思潮の変化に、保守的立場から警戒感を抱く。国家主義団体、国本社は彼の政治的資産でもあるが、それが西園寺に警戒されたか。(続く)2021/09/06
ジュンジュン
16
本書最大の魅力は、本書それ自体だと思う。平沼騏一郎だけで本になるなんて、中公新書はやっぱり凄い。司法官として、政治家として位人臣を極めた生涯を跡付ける。迷言「複雑怪奇」しか知らなかったが、頑迷な国体主義者のイメージは読後も変わらなかった。2021/10/04
かんがく
15
エリート司法官と国家主義者の二側面を持つ首相経験者であるが、本書では検察官としての前半生が丁寧に描かれていたため、戦前の司法制度史としても読むことができて興味深かった。政党、軍部、宮中などの諸勢力の間で微妙な位置にいたことがよくわかる。2023/04/29
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