内容説明
北宋―遼、西夏の外圧に苦しみながら都市文化が繚乱とした時代、検屍の技術・制度は当時の世界最高水準に達していたという。
八代皇帝の御代、政和七年(1117)四月半ばの朝。首都開封一の盛り場、桑家界隈の芝脚小屋海棠棚で、人気女役者楊安奴の死体が発見された。外傷はなく病死とも考えにくいが、赤子を朶んでいたことから、愛憎の末の殺しとも見られる。
捜査検屍を担当する方淵之が死因解明に苦慮するうち、部下の丘千五が紅い油傘を死体に翳すと、なんと鳩尾に傷跡が浮かんできた…(第1話 紅油傘)
首都開封と水都蘇州を舞台に、愛と殺意の果てを描く七幅の絵巻!
戸川乱歩賞受賞の異才が放つ傑作中国医学ミステリー、待望の電子化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
58
物語としていささか地味な感じは否めないがその分かえって真実味は増している?捜査官の一方的な思い込みで自白を強要せず、宋の時代に遺体を検験(検屍、検証)して真相の究明に至ったとは…日宋の交易は平安時代中期から鎌倉時代中期に及んだと云うからその頃に理知的な犯罪捜査が行われていたことに驚きを隠せない。ただし作中に示されたように検験が専門職と云うに至らず、また専業的な垣根のせいで医師が死体剖験に参与しなかったことで以後の発展が阻害されたと云うことらしいが度重なる王朝の衰退と勃興も影響しているように思えてならない。2022/03/06
ミノムシlove
7
かなり前に読んだ。著者は現役の医師らしく、医療技術についても詳しく面白く読んだ記憶があります。『誰それが何々して“くれた”。』という記述が頻繁にあり、そういう人の親切に応える箇所にとても好感を抱いて読んだ覚えがあります。
演習家康くん
4
スラスラ読めたのだけど、どこにも引っかからなかったのがアレだなぁ。知識があればもっと引っかかって面白くなるのかなぁ。2014/03/21
ムミン
3
丘千五の検験のプロという自負がかっこうよかった。主人公の目から見る彼のかわいらしさに心を打たれたので、阿月の振る舞いは気持ちが苦しく、丘の「願いを聞いてやってください」という曇りない願いに悲しくなった。(丘本人は晴れやかな描写だったが) でもなんとなく阿月も不器用なだけで丘のことは悪く思ってなかったんだろうな…という描写もあり…。 丘と阿月が出なくなったあたりで物語にエッジを感じなくなってしまった。 阿月の第三の願いが主人公との子どもが欲しいとかだったら、読んでて自分が立ち直れなかったかな。2023/06/26
ぬのさと@灯れ松明の火
3
中国の時代物推理小説で時折見かける、頭頂部の髷で隠れる部分に釘を打ち込んで殺人というトリック、本当に即死するの?2013/02/14