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内容説明
〈思想的課題〉としての彫刻を語りたい。
街角の彫像から見えてくる、もう一つの日本近現代史、ジェンダーの問題、公共というもの……。
都市に建立され続け、時に破壊され引き倒される中で、彫刻は何を映すのか。
注目の彫刻家・批評家が放つ画期的な論考。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
K
9
彫刻を鑑賞するのは好きだが、その存在理由や、そもそも彫刻とは何か?ということをあまり考えた事がなかった。正確には、考えたいと思っているが、自分の中に道具がそろってない感覚がある。(唯一、ジャコメッティの作品には思い入れがあるが。)そこで、きっかけを作るべくまずはこれを読む。小田原氏の主張としては、彫刻とは問いかけを行う存在だということ。彫刻自体は変わらないが、それを見るわれわれが判断し、そしてしばしば意見が対立する。例えば、差別を助長するものかどうか、本当に平和を象徴しているのかどうかとか。2023/10/18
owlsoul
7
我が国の彫刻は、石碑文化と鋳造による人物像が結びついたところに端緒がある。碑は記憶の風化に抗い、その場所で起こった出来事を伝え残す。その伝達力を受け継ぐ彫刻は、やがてプロパガンダとして利用され、戦時中は戦意高揚のため、戦後は平和の記念として街に林立した。場所と結びつくゆえに公共性を持つ彫刻は、ときとして社会との軋轢を生み、拒絶され、破壊される運命にある。変化せずそこにあり続ける彫刻の意味が読み替えられ、引き倒されるとき、我々は自らの変化を実感する。その「超克」の瞬間にこそ、アートとしての彫刻は存在する。 2023/03/21
kenitirokikuti
7
図書館にて。〈再び《平和の群像》の出自に立ち戻って考えるなら、公共空間の女性裸体像は、「ナショナリズムを十全に定着しうる形態」であるとともに、敗戦と占領というこの国の歴史をうつす存在といえるだろう。 さて裸体彫刻の街頭設置が落ち着いた現在、新たな偶像として建立され続けているものがある。アニメキャラクターの彫像だ。〉p.052 本書が扱うのブロンズ像で、水木ロードの妖怪像などが街頭するが、「ガンダム」像もそうだよな…。アニメ像には台座はない。台座は東洋の石碑の系譜。2022/02/05
TOMYTOMY
6
彫刻と公共性という関係性が、あまり繋がってなかったからこそ発見が非常にあった。 彫刻というある意味日本のマーケットのなこでマイナー性が高いところで非常に大事なことであるし、女性の書き手というのも意味がある。2021/11/14
sakanarui2
3
近代において登場した公共彫刻という存在を、その歴史から読み解く本。作者自身も彫刻家だが、作品をその芸術性から切り離し、政治的な文脈から考えていく。 公共の場にヌード像が数多く立てられている意味についてずっと気になっていて、高松市の公園にある少女像を巡る論争で著者の文章に出会った。軍国主義(軍神像)から平和主義(裸婦像)へ、でも銅像の役割は変わらず、時代の変化の中で破壊され、撤去され、また立てられる。2025/09/20
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