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内容説明
20年間に渡るアメリカによるアフガニスタンの支配は終焉を迎えた。タリバンの復権は何を意味するのか? 日本にはどんな影響があるのか? そして大きな歴史の流れのなかでアメリカの終焉を決定づけるきっかけになったと語るのが、イスラーム法学者の世界的第一人者・中田考氏。中田氏は現在のタリバン指導部との親交も深く、世界でも稀に見るタリバンの思想と政治組織に精通した人物。はじめて語られる「タリバン復権の真実」に読者は驚愕と衝撃を受けるにちがいない。今後の国際情勢を見極める上で必須の教養書の一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
69
本書で価値が高いのが100ページに及ぶタリバンの思想についての広報文章の訳出部分だ。アフガニスタンの人々の多くが何を支持しているのか、その根拠が(もちろんプロパガンダ的要素を含んでいるにせよ)ここに示されている。前後の著者の論考、および内藤正典による解説は、これ基礎にして読むべき。もちろんタリバンの主張、あるいはそれを好意的に捉える著者の立場を全面的に受け入れることはできないが、少なくとも「他人の家に土足で上がり込んでやりたい放題をした」アメリカの誤りは明らかと思う。『タリバン台頭』と併読して良かった。2022/04/14
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇵🇸🇾🇪🇱🇧🇨🇺
5
2021年10月著。つまりアメリカ軍のアフガニスタン撤退直後。 主にタリバン政権復活についての本で、近代アフガニスタンの頃から現在までを扱う。特に第1次タリバン政権崩壊から第2次政権における復活までの20年間が中心となる。アメリカをはじめとする西側マスコミによる誹謗中傷に対する反論的な面も多いが、個人的には賞賛するほど素晴らしいとは感じなかった。それでも北部同盟も傀儡政権も統治能力がない以上タリバン政権しかない。→続く2022/04/01
aeg55
5
2021年8月15日、劇的にあっさりとカブール陥落。その状況や背景を欧米の情報をかいつまんでメディアが垂れ流すだけの日本ではなかなか得られない状況が記録されている。日本をはじめとする国々を支配し続けてきたアメリカの凋落を強く印象付ける出来事だった。遠いアフガニスタンの状況を読むと同じようにアメリカの支配下にある日本のしょうもない状態を思い知らされるのであった。2021/12/16
田中峰和
4
ベトナムに次いで、アフガニスタンでも米国は敗北した。著者の中田考はカイロ大学の博士課程を修了した人物。自由主義社会が信奉する民主主義思想とは会い寄れないのは当然。民主主義はキリスト教が堕落し、人権を蹂躙した後の近代西洋の哲学者が作った宗教であるとする。タリバンの広報宣伝資料にしかならない。西洋諸国が最も嫌悪するのが彼らの女性の人権に対しての価値観。女性は奉仕され、男性は奉仕する存在で、その立場を区別する。前近代的と指摘しても彼らには通用しない。教育を受けさせず、責任ある立場に就かせない。あまりに後進的だ。2022/09/05
竹の花
4
タリバン復権に至る経緯の解説に加えタリバンが自らその組織や思想,世界観を語った文書2編を全訳掲載する.タリバンは自身への批判を理解した上で独自の論理をもって民主主義の否定,シャリーアの下での女子教育の実施を主張していることがわかる.著者や解説の行論は論争的だがタリバンのロジックを知るにはうってつけの本.本書があのカブール陥落からわずか2ヶ月ほどで刊行されたことに感心する2022/02/13