内容説明
知識とは何か,真にものを知るとはどういう場合を言うのか.当時行われていた三つの知識説をとりあげて批判しつつ,哲学が様々な角度と立場からの吟味や思考を要求するゆえんを示す.有名な無理数論やソクラテスの産婆術などのエピソードを交えた対話篇.日本における本格的なプラトン研究をきりひらいた泰斗による翻訳.
目次
凡例┴テアイテトス┴訳注┴解説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
cockroach's garten
27
知識は何であるかを突き詰めようとした話。主要人物が若いながら怜悧なテアイテトスとソクラテスの二人だけで、少しテオドロスという幾何学に精通した元ソフィストが出てくるが、出番は少ないので実質二人だけの問答である。感覚から始まって感覚をしていないのも知識となり得るかという認識論になって少々堂々巡りをしては結局正しいものこそ思えば知識なのだと帰結した。根源を見つめて徹底的にそれを議論する哲学の仕方を本書からは学べると思う。2017/05/15
Uncle.Tom
19
「知識とは何か」ということは現在もですが、当時では暗黙の了解のようにされていたのでしょう。弁論家・ソフィストの社会的地位が高かったことからも、このことは見逃されてきたところなのでしょうね。"感覚と知識は別物だ"という主張は現代の認知科学にも通じる鋭い指摘だと思います。また、有名なソクラテスの産婆術に触れられたのも興味深かったですね。まさに哲学するという真髄のような語り口です。なかなか苦戦してちょっと思考が追いついてないところが多々あったので早いうちに読み返さなければとは思ってます!2019/01/22
singoito2
9
「実践理性批判」きっかけ。「155D なぜなら、実にその驚異(タウマゼイン)の情(こころ)こそ知恵を愛し求める者の情なのだからね。つまり、求知(哲学)の始まりはこれよりほかにはないのだ。」p56の名文句を読みたかったのです。「知識は感覚」という経験論を排除する一方、虚偽の可能性を形式論理の中に模索して行き詰まって観念論の限界も示す、というふうに読みました。2024/04/13
朝乃湿原
8
今までプラトンの書を読み進めてきたが、本書は大変難解であった。正直、消化不良感が否めない。訳者の解説を読み、大まかには内容を把握できたが、細部までは再読しないと理解できない。またプロタゴラスとヘラクレイトスの説については無知だったので、こちらも知っておかなければならなかっただろう。しかし哲学書は一度読んだだけで満足できるような容易なものではない。何度も何度も繰り返し読み続けて、思考していくのが大切であるので、本書もまた再読したいと思う。2023/02/10
吟遊
8
知識とはなにか、を問うのだけど、答えが出ない対話篇。これを書こうと思う(紙も貴重な時代に)ってすごいなあ、となんとなく感動。細部に面白いポイント(産婆術についてなど)が散りばめられていて、拾って読むのがまたよい。2016/03/08