内容説明
ひいきのプロ野球チームを熱烈に応援して勝敗に一喜一憂し、アイドルを追っかけてオタクの生活に浸る。応援団のリードに手拍子を合わせる。応援団としてファンを統制する。
他者を激励して成功を自分のものとし、失敗を自分の責任のように背負い込む応援するという行為を、どういう心性が支えていて、生活にどのように位置付けているのだろうか。大学応援団の実態や、スポーツと芸能の現場――特にプロ野球の私設応援団と、親衛隊からヲタ芸まで――をフィールドワークに基づいて分析し、選手・演じ手と観客との関係を考察する。
大学応援団の歴史や因習に縛られた上下関係、「男の世界」に女性が入り込んで生じるジェンダー問題、伝統校の新入生へのイニシエーション行為、それらが時代とともに変貌するさまを解明する。
また、プロ野球の私設応援団が引き起こした事件と無秩序の実態、その後の統制と管理、トライアスロンなどの参加型スポーツイベントの地域住民と参加者の交流、さらには伝統芸能とアイドルに熱狂する忘我現象とは何か、にも迫る。
応援文化を多角的に描くことで、「他者によって自分の存在を確認する応援という行為」を照らし出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mittsko
7
「推し」「オタク」への、宗教学者としての個人的関心から手に取った。「応援に関する通文化比較」(19頁)の一冊。取り上げるのは、スポーツと芸能。とくに、日本の「応援団」に一番多くの紙幅が割かれる。 ※ 著者らは人類学を中心に、音楽学、社会学、民俗学、メディア学など(スポーツ人類学のような、私がこれまで一度も触れてこなかった研究領域もあり、大変興味ぶかかった)。個別の論考はいずれも大変堅実であり、個人と各学界における研究の蓄積がみてとれる。それらを「応援」範疇のもとに集合させた本書の試みは、大変意義ぶかい。2021/08/09
かわくん
2
この本の中で、自分の出身高校の蛮カラ応援と学校文化が取り上げられていた。執筆者はその高校の出身者というわけではなく、東京出身で現在は鳥取の大学で教えているらしい。書店で見てすぐに購入した。というのも長男が同じ母校で応援委員をしていたため、海外赴任中ではあるが読ませたいと思ったため。まじめな論文であった。学校のさまざまな資料を参照し、関係者にも取材を重ねたようである。「そこはどうなのか」という疑問を持った部分もあったが、時代の変遷とともに文化も変容したと自分は解釈した。2021/09/09
モヌ
0
応援をテーマに11名が執筆。オセアニアの歌と踊り、学生応援団、プロ野球などスポーツの応援、芸能・祭、アイドルの応援…多様な観点で論が展開されており興味深く読んだ。それぞれの論考についての感想はとてもここには書ききれない。 本の趣旨とは逸れるが、著者自身も応援する側•される側の当事者として関心を抱いたことをきっかけとした論考も多く、「ささいな日常の場面・環境でもこうして研究テーマにできるのか」と気付かされた。2023/07/25




