ハンス・ヨナス 未来への責任 - やがて来たる子どもたちのための倫理学

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ハンス・ヨナス 未来への責任 - やがて来たる子どもたちのための倫理学

  • ISBN:9784766427554

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内容説明

▼科学技術文明において、現在世代は未来世代を滅ぼすことができる。
アウシュヴィッツの惨禍を生きた哲学者が描く、テクノロジー時代の新たな倫理学
▼気候変動、ゲノム編集、放射性廃棄物――

テクノロジーは、遠い未来にまで影響を及ぼす。
したがって私たちは、まだ生まれていない未来世代に対し、責任を負わなければならない。直感的にはそう思える。
しかし、存在していない者とは合意形成ができず、またそこに人権を認めることもできない。
ここに、ハンス・ヨナスの提唱した、まったく新しい未来倫理学の考え方が呼び出される。
ユダヤ人として二〇世紀を生き、自ら戦場に立った彼は、なぜ「未来への責任」を見出し、そしてどのような思索を重ねたのか。
気鋭の若手による、ヨナス研究の新たな地平。

目次

はじめに
  テクノロジーと未来/「本当に人間らしい生き方の永続」
  先行研究の概観/本書の構成

第1章 人間と想像力――哲学的人間学Ⅰ
 1 動物と人間の境界
  宇宙人の思考実験/想像力とは何か
 2 反転する想像力
  無限の反省/人間像の形成
 3 墓と形而上学
  なぜ人は墓を建てるのか/形而上学の起源

第2章 歴史をめぐる問い――哲学的人間学Ⅱ
 1 歴史とは何か
  終わりなき歴史の運動/「自由の場は歴史である」
 2 ユートピアに抗して
  ユートピア主義の論理/凌駕されえない過去  
  「未来は未来それ自身である」
 3 歴史の予測不可能性
  歴史が予測される条件/新しい眼で世界を眺めること

第3章 死の存在論とニヒリズム――哲学的生命論Ⅰ
 1 「死の存在論」の誕生
  原始の生命観/魂と自然の分離/死の存在論
 2 亡霊と化す精神
  随伴現象説/シミュレーションされる思考
 3 人間と世界の断絶
  死の存在論の矛盾/ニヒリズムへの没落

第4章 テクノロジーの脅威――技術論
 1 テクノロジーとはなにか?
  無限の円環/終わりなき進歩
 2 テクノロジーの脅威
  予測不能・対処不能・回収不能/剣と鋤
 3 テクノロジーと倫理
  新しい倫理学の必要性/存在と当為の切断
  形而上学的真理の否定/一つの突破口

第5章 生命とは何か――哲学的生命論Ⅱ
 1 新たな生命論を目指して
  アメーバが自由であるとしたら/哲学的生命論の方法
 2 生命と自由
  窮乏する自由/生命の空間性/生命の時間性
 3 傷つきやすさと実存
  生命の傷つきやすさ/死と実存

第6章 傷つきやすさへの責任――未来倫理学Ⅰ
 1 責任とは何か
  二つの責任概念/他者への気遣いとしての責任
 2 責任の対象
  生命の「呼び声」/乳飲み子への責任/子どもの他者性
 3 責任の主体
  責任と自由/「呼び声」を聴くこと

第7章 未来世代への責任――未来倫理学Ⅱ
 1 未来世代への責任の基礎づけ
  すべてに先行する責任/「未来の人間は存在するべきである」
 2 開かれた歴史への責任
  形而上学の開放性/その時々に、別々の仕方で
 3 未来の予見
  不吉な予言/恐怖に基づく発見術

第8章 アウシュヴィッツ以降の神――神学
 1 なぜ神話を語るのか
   「神は沈黙した」/仮説としての神話
 2 無力な神の神話
  無力な神/宇宙創成の物語/行為の不死性
 3 神と記憶
  記憶する神/責任と記憶

おわりに――やがて来る子どもたちのために
 

あとがき
参考文献
索 引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬弐仟縁

56
私たちは、生れていない未来世代を脅かす力をもっている。すぐにCO2排出量を削減できるかどうかが、100 年後の人類世界を大きく左右する(1頁)。人間らしさとは何だろうか(14頁)。想像力だと読んでいくと理解される。人間だけが創造力をもつ(22頁)。想像力が対象を 多様な形で(傍点)描き出す能力(36頁)。二つの責任、契約責任と自然責任(129頁~)。責任とは傷つきやすい他者の存在への配慮(143頁)。人間の尊厳。責任能力を指している(153頁)。時間的な責任と神学的な責任(傍点、190頁)。2022/10/05

urigaya

1
やがて来たる子どもたちのための倫理学・・・という概要に興味を持ち読み始めたものの、ハンス・ヨナス個人の論評を繰り返し洗脳される結果となった。親には、子どもが誰であるかを決めることはできない、その子供が、その子供である責任は誰にもない、だからこそ、親じゃその子供を守る権利を引き受ける、なぜなら、その子供は世界にたった一人しか存在しないのだから。この視点、あるいは価値観、世界観で、すべての子供(=人間)を見つめることができたなら、この世は少しずつ変化していくのではないだろうか。2021/09/25

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