文春e-book<br> メルケル 世界一の宰相

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メルケル 世界一の宰相

  • ISBN:9784163914732

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内容説明

世界一の権力を握った歴史的なドイツの女性宰相、メルケルの決定的評伝!

東独出身の地味な理系少女が、なぜ権力の頂点に立てたのか?
――その強さの源泉は「倫理」と「科学」にあった。

牧師の娘として、陰鬱な警察国家・東独で育つ。天才少女としてその名を轟かせ、ライプツィヒ大学の物理学科に進学。卒業後は東独トップの科学アカデミーに科学者として勤務する。だがベルリンの壁崩壊に衝撃を受け、35歳で政界へ転身する。

男性中心のドイツ政界では完全なアウトサイダーながら頭角を現す。その過程では、東独出身の野暮ったさを揶揄されたり、さまざまな屈辱的な仕打ちも受けた。40歳で環境大臣に就任すると気候変動に取り組み成果をあげる。51歳で初の女性首相へとのぼりつめる。

首相としてドイツをEU盟主へ導き、民主主義を守り、ユーロ危機も乗り越えた。トランプ、プーチン、習近平ら癖のある各国首脳とも渡り合う。人道的理由から大量の難民を受け入れた。一方で、極右やポピュリズムの台頭にも悩まされた。元科学者ならではの知見を生かし、コロナとの戦いに打ち勝った。

演説では美辞麗句を好まず、事実のみを述べるスタイル。聴衆を熱狂させるオバマのような能力はないと自覚している。SNSは使わない。私生活も決して明かさない。首相になっても普通のアパートに住み、スーパーで買い物をする庶民的な姿が目撃されている。得意料理はジャガイモのスープ。熱烈なサッカーファン。夫の渾名は”オペラ座の怪人”。彼女がロールモデルと仰ぐ意外な人物の名前も、本書で明かされる。


プロローグ 牧師の娘に生まれて
第1章 秘密警察の共産主義国・東独で育つ
第2章 物理学科の優秀過ぎる女子大生
第3章 東独トップの科学アカデミーへ――袋小路の人生
第4章 ベルリンの壁崩壊――35歳で政治家へ転身
第5章 コール首相の“お嬢さん”と呼ばれて
第6章 初の女性首相へ登りつめる
第7章 ブッシュ大統領と親交を結ぶ
第8章 プーチン、習近平――独裁者と付き合う方法
第9章 ベールに包まれた私生活
第10章 オバマ――条件付きのパートナー
第11章 緊縮の女王――ユーロ危機と経済大国ドイツの責務
第12章 民主主義の守護女神――ウクライナを巡る攻防
第13章 難民少女へ見せた涙
第14章 2016年、最悪の年――英国のEU離脱
第15章 トランプ登場――メルケルは“猛獣使い”になれるか
第16章 ドイツにもついにポピュリズムの波が
第17章 ラスト・ダンスはマクロンと
第18章 コロナとの死闘
エピローグ 世界最大の権力を持つ女性、その素顔と遺産とは

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ふう

104
わたしはメルケルが好きでした。権威を振りかざすことなく、冷静に誠実に語りかけ、ときにお茶目でかわいらしい笑顔を見せてくれる。コロナによるロックダウンを呼びかける演説は、心からの訴えかけに、遠く離れた国にいても胸を打たれました。この本にはメルケルの生い立ちや考え方、政治姿勢が世界情勢と絡めてとてもわかりやすく書かれていて、ますます彼女が好きになりました。「わたしはわたしに賛成してくれる人々の首相であると同時に、わたしに反対する人々の首相でもあります。」この民主主義の基本を、どの国のリーダーも忘れないでほしい2022/08/27

なゆ

96
なぜだかわからないが、私はこの方が好きだった。雄弁でもなく華やかというわけでもなく、質実剛健という感じが。あの、プーチンだのトランプだの習近平だのの猛獣ぞろいの中でも阿ることなく感情的になることなく淡々と渡り合っていたとこが。とても興味深い人物だ。東ドイツの物理学者だったメルケルは、ベルリンの壁崩壊後やっと西の自由な空気を味わい、35で政治家45で党首51で首相とすごい勢いだったのだ。メルケルの奮闘からEU事情も少しわかり、ロシア・ウクライナ問題をはじめ世界はまだまだ非常に危ういバランスなのだと思った。2022/05/17

キムチ27

65
第三者から見ると笑止と思える程に涙での読書体験を得た。装丁で朝夕ページを開く旅は無言のうちのメルケルとの空気の共有という想いで過ごせた。ほぼ同年代でありつつも過ごした時間/社会の熾烈さは及ぶべくもない。牧師の娘と生まれ比類なき明晰な頭脳を持った女性と同じ時間に生きたと言うだけでも随喜。2020末に舞台を去った彼女への評価は向後待たれるであろうとも個人的には最高の女性であり政治家と思える。2022地球はコロナで揺れ続け彼女不在の世界は中国 習/露 プーチンの歪んだ権威主義と未だ燻るトランプ主義の残像で不透明2022/01/23

ぶんこ

62
政治家にとっての一国のトップとは、権力の象徴ととらえるか、『権力は何かを可能にしてくれるものー権力の反対は無力』と言い切り、理想とする世界構築に向けて挑んだ人。読後の感想は『自由の秘訣は勇気』と語った言葉そのものの人。そして誠実。派手さはないが、確実に信ずる道を進んだ稀有な人。東独での警察国家を耐えた35年間、首相になった時に初めて知った信用していた友の長年にわたる密告、そしてオバマによる個人携帯の盗聴。する側ではなく、される側で良かったと思いたい。プーチン、トランプの人間性に絶句。ここは辛くて流し読み。2022/08/14

TATA

61
昨年に退任した独のメルケル元首相。彼女の生い立ちから近年の苦心惨憺たる政権運営までを綴った一冊。東独出身のリケジョというなにかと少数派に属する彼女ではあったが、その忍耐力と知力で重用されていく。本書は汎欧州主義や人権の立場から彼女の実績を高く評価しているが、欧州財政危機や移民問題での対応で彼女を厳しく批判する人がいるのも事実。ただ、意見の違いで激しく対立してしまう事案にも立ち向かった点は確かに彼女の功績。彼女がいなくなった後、欧州がきな臭くなってるように感じる。2022/02/12

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