内容説明
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人気シリーズ「乙女の本棚」第23弾は梶井基次郎×イラストレーター・しらこのコラボレーション!
小説としても画集としても楽しめる、魅惑の1冊。全イラスト描き下ろし。
影と『ドッペルゲンゲル』。私はこの二つに、月夜になれば憑かれるんですよ。
満月の夜、療養で訪れた土地の砂浜で私はK君と出会った。
梶井基次郎の『Kの昇天』が、
美しい空間の色彩構成で叙情的な余韻のある作風で知られ、
書籍の装画などで活躍する
イラストレーター・しらこによって描かれる。
名作文学と現代の美麗なイラストが融合した、珠玉のコラボレーション・シリーズ。
自分の本棚に飾っておきたい。大切なあの人にプレゼントしたい。そんな気持ちになる「乙女の本棚」シリーズの1冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
96
梶井基次郎の短編。しらこの絵が幻想的な物語を彩ります。月の影を追いながら、イカルスの墜落を何度も経験しては、月光を遡って昇天することを夢想するK君について語るわたしは、K君の知り合いから溺死した原因は自殺か過失かと尋ねられ、月へ飛翔したためだろうと手紙で答えます。K君もわたしも、まるで浮き世から離れた存在であるかのように感じます。満月の夜は人をそんな狂気に陥れる不思議な力を持っているのでしょうか。今宵も満月です。月が南中する時間帯に海辺を散歩するのはやめておくのが身のためです。2021/11/18
寂しがり屋の狼さん
79
【乙女の本棚】シリーズ23冊目📕梶井基次郎さんは本作2冊目、挿絵は初の『しらこ』さん(◕ᴗ◕✿)31歳の若さで逝去した『梶井基次郎』の作品もこのシリーズを読み続けていなければ出会えなかったと思います。2022/01/10
たまきら
46
乙女の本棚シリーズを楽しませてもらっているけれど、現在の所とても不満なのは、いつまでたっても男性作家ばかりが紹介されていることでしょうか。しかもどこかホモソーシャルというか、男子高出身の成績優秀者ばかりが描いた頭の中だけで作り出された文が多くて…いや、いいんですけどね、なんだか「男が理想とする乙女」が鼻につき始めたのかなあ…。この文章を読みながら、ぐるぐるとそんな感情を持て余しました。2024/01/07
(*'ω' *)@k_s
40
県立図書~「乙女の本棚」~梶尾基次郎×しらこ~助からない命、逃れられない死、影の中に見える“もう一人の自分”、生と死の綱渡り。しらこさんの淡い描写が、追憶が可視化されたようで、とても合っています。タイトルに『Kの昇天』~或はKの溺死~とあり、読む前には意味がわかりませんでしたが、読み終えて納得。物書きが死を意識した時、作品はこのような形で昇華されるのでしょうか。とても叙情的な一冊。2022/11/05
キジネコ
39
幻想譚『それは「気配」の域を越えて「見えるもの」の領分に入って来るのです。影と「ドッペルゲンゲル」私は この二つに、月夜になれば憑かれるんですよ。』とKが云います。影がKを、彼の命を奪ったとも。しかし月光の浜景、己の影と踊る様なKに出会うてしまう描写が実に生な感触を伴って読者の実感を導きます。青空文庫も読み返してみたら全文使われていました。絵は物語の世界観を大きく拡張する事に成功しています 素晴らしい作品。満月の光が静かに降り注ぐ海岸の情景が目に見えるんです。潮騒が遠く近く、読者は夢幻の世界に誘われます。2024/04/17