内容説明
二足歩行、交易、産業の発展……すべて成功の鍵は「木」にあった!
ヒトはいかにして二足歩行を始め、文明を築き、驚異の発展を遂げたのか?
定説では、石・青銅・鉄が重要な役割を担ったとされている。しかし、じつは「木」こそが歴史をつくった最も重要な鍵だと著者は言う。類人猿の樹上の巣から、交易に活用された木舟、多様な建築技術、エネルギー源としての木炭まで、つぶさに語られる木の驚くべき汎用性を通して、今まで見えていなかった新しい歴史の姿が現れる。
人類学・建築学・生体力学など幅広い研究をもとに、構造的な特殊性をもつ木と、創意工夫に長けた人類の700万年にわたる関係を、斬新な視点で解き明かす壮大な物語。
〈内容〉
第1部 木が人類の進化をもたらした(数百万年前~1万年前)
第1章 樹上生活の遺産
第2章 木から下りる
第3章 体毛を失う
第4章 道具を使う
第2部 木を利用して文明を築く(1万年前~西暦1600年)
第5章 森を切り拓く
第6章 金属の融解と製錬
第7章 共同体を築く
第8章 贅沢品のための木工
第9章 まやかしの石造建築
第10章 文明の停滞
第3部 産業化時代に変化した木材との関わり(西暦1600年~現代)
第11章 薪や木炭に代わるもの
第12章 一九世紀における木材
第13章 現代世界における木材
第4部 木の重要性と向き合う
第14章 森林破壊の影響
第15章 木との関係を修復する
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
77
分野的にあまり手にしない本だったからか、自分が知らない間に人類学では随分と研究が進んでいた。読みながら何度も付箋を貼りメモしてきた。ブログ日記にもそれなりに書いてきた。 本書では、「定説では、石・青銅・鉄が重要な役割を担ったとされている。しかし、じつは「木」こそが歴史をつくった最も重要な鍵だと著者は言う」。2022/01/24
tamami
52
初期人類から現代まで、人間と木との様々なトピックについて記す。随分大きなテーマであるが、中心となるのは欧米の歴史に見る、木が果たした役割である。虚を突かれた思いがしたのは、私たちは人類最古の道具としてすぐに石器を思い浮かべるが、並行的に道具としての木があったということである。時と共に消えるのも木の特性ではある。欧米が舞台ということもあり、木の使われ方でも建造物や交通・運輸の装置、様々なインフラについて多くページが割かれている。最も著者の研究対象は世界中?に広がっていて、木の使われ方や現代の木を巡る課題等→2021/11/09
川越読書旅団
25
二足歩行を含め、人の進化や、交易、商業、産業にどれだけ木材(木)が影響を与えてきたのか、歴史的事例を通じて解説。これまで、人類史における石や鉄の貢献度を解説する考古学関連の書籍を多く目にして来たが、木は目から鱗。ややテクニカルな話に傾注してしまっているところが気になるが、非常に興味深い一冊。2021/11/07
to boy
24
「木」をテーマにして人類史を紐解いた名著。枝を手繰りよせて寝床を作った類人猿の頃からいつも木は人類とともにあった。根菜類を掘る棒、調理や暖を取るための薪など人類は木を利用することで進歩してきたという著者。石、青銅、鉄などの材料が利用されるようになっても、その陰には常に木が存在した事に改めて気付かされた。主に欧州について書かれているが、日本でも広葉樹を倒し杉やヒノキを植林することの危険性も書かれていていろいろと考えさせられました。2022/01/20
翠埜もぐら
16
考古学は基本「出てきた物」で語るのでなかなか残らない「木」に対する扱いに不満があるのは良くわかりましたが、なんか読みずらい?断定が多い事にも違和感があったし木製品から見る人類史ならもう少し系統立てて説明してほしかったです。それに木と人類の関係ならヨーロッパ・北米以外の地域の方が比重が大きいような気がしますが、もっぱら作者に近いところの話ばかりで、木と紙で家を作っていたアジアの話はほぼなかったのにはがっかりです。副題の「人の進化と繁栄の秘密に迫る」と盛った割にはインパクトがある話ではなかったですね。2022/02/11