内容説明
家族や友達といるより、喫茶店のアルバイトが好きな17歳の更紗。アイスコーヒーだけで閉店まで粘る常連客の「黒縁さん」。おしゃべりが苦手な二人が、店以外で偶然出会ったのは夜の公園だった。お互いの連絡先も知らないまま始まった特別な時間は、胸に秘めた過去の痛みを解きほぐしていく。愛に飢えた彼女と愛を諦めた彼が織り成す成長の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソルティ
252
地味で展開もよくある感じ、ではあるがとても大切なことを言っていて後半は心にしみる。自分を励ましてくれた人が実は自分の言葉に救われてた、っていい関係。ドラマチック展開もあり、少しキレイすぎではあるが、小説はこのくらいでもいいかも。「「言葉は、誰かを傷つける武器になってしまうことがある。でも、自分の心を守る鎧にもなる。時には誰かを守ることができる盾にもなる」」「「更紗さんは、自分を守るための言葉を使うのは少し苦手なのかもしれませんが、更紗さんの、誰かの気持ちを温めるための言葉の力は、とても素晴らしいです」」2023/03/11
ゆなほし
37
真夜中が苦手な2人が出会ったのは、きっと必然だ。家や学校よりも喫茶店のアルバイトが好きな更紗と、その喫茶店にいつも夕方訪れる「黒縁さん」。夜の公園で、少しの時間を共有するうちに、共鳴するように心の底を解きほぐしていく。誰にも人に言いたくない事や、言わずに済ましている事はあって、でもやっぱり言わなければ何も伝わらない。2人の共鳴は双方をそっと真夜中の底から救い出し、1歩踏み出す勇気をもたらしてくれた。言葉の重さ、それを伝える事の難しさ、そしてそれにも優る伝える事の大切さを優しく教えてくれた。2021/11/07
ブルちゃん
36
主人公の二人がとっても優しい話し方で、遠くて尊い~笑 でもこの本、勝手な解釈だけど、汐見さんの気持ちが凄く伝わります。小説家の方だから、言葉の強さや危うさ、綺麗事、思ってもない事が人を傷つける事に、自分も傷ついて、たくさん向き合って来たんだと思う。その上で選ぶ究極のど直球の言葉だから、私は受け入れられるんだと思った。素敵な作家さんだと思う。ペンチャンありがとう😊✨ 2022/05/31
Walhalla
36
人とコミュニケーションを取るのが不得手な女子高生の物語です。ついつい、消極的な態度になりがちですが、運命とも言える出会いによって心が成長していく様子がとても良かったです。言葉にするのは、やはり大事なことなのですね。でも、相手を不用意に傷つけないように、大切に、大切に。自分の居場所が、夜の公園からもっと明るい場所に変わっていくと期待できる終わり方も良かったです。2022/05/18
pinko
25
中学女子に大人気の汐見夏衛作品2冊目、お父さんと2人暮らしの更紗、自己肯定感の低い引っ込み思案んの女の子。バイト先でのトラブルがきっかけでお客さんの仁科さんと話すようになり、更紗の心は前向きに変化してくるお話。 なんとなく市川拓司さんの世界に似てると思いながら読んでいました。まだ未熟で多感な中学生。この本は読み易くメッセージが伝わりやすいので、新学期が始まったら、勧めてみようと思いました。2023/08/11