内容説明
「凡庸さは金になる。それがいけない。何とかそれを変えてやりたいと思い悩みながら、何世紀もの時間が無駄に過ぎてしまった」――28年間の会社員生活を終え自由の身となった小説家。並外れた美貌を持ちながら結婚に破れた女優。「鳥獣戯画」を今に伝える高山寺を興した高僧明恵。父親になる三十歳の私。恋をする十七歳の私。時を超え、主体を超え、物語は旋回していく。語りの力で何者にもなりえ、何処へでも行くことができる小説の可能性を、極限まで追い求めた谷崎賞作家最大級の野心作「鳥獣戯画」。単行本未収録の傑作短篇「我が人生最悪の時」を併録。自筆年譜付きの決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Foufou
10
文庫収録の『我が人生最悪の時』が読みたくて手に取った次第。さるSNSで「誠恐ろしきは女なり」といった感想を目にして、そういうことを書く作家だったっけと疑問に思ったのがそもそもの発端。描かれる女は、あざといというより凡庸で失望の対象であり、誠恐ろしきは…ではないかな。本来句点が入るところに読点が来て、独特の読みのテンポを強いられるのからして力点は語りにあり、それは表題作も同じ。語り手の交代や主題の移行をシームレスに行うためのギミックとまずは見るべきで、その次に来るのが私小説とはそもそも可能なのかという実験。2025/03/05
そうたそ
7
★☆☆☆☆ 切れ目ない文章が続き、知らぬ間に視点人物も変わっている、という著者らしい内容ではあるが、これは全く分からず。読み切ったが、ほぼギブアップに近い。2024/06/28
ブルーツ・リー
6
解説にもあったが、小説の構成として、凡庸な人物が語り始め、それが華やかな女性の視点に変わり、更には千年の時を超えて明恵上人へと移り、最終的に再び凡庸な語り手に、一人称が戻る、という構成を取っている。 物語として面白いのも圧倒的に明恵上人の部分で、前後半の語りは詰まらなくすら感じるのだが、何と、著者は、あえて、退屈な人物を描く事を選んだのだという。 純文学らしい、野心的な、実験小説と言える。 同著者の「電車道」では、人称移動の語り口が成功していたが、この作品では、どうか。 野心的な作品である事は間違いない。2022/01/19
funa1g
2
凡庸さに絡め取られた私の怒りとともにはじまり、怒りに駆られる凡庸ではない人々、女優と明恵上人の話を経由し、やはり凡庸な私の昔語りへと戻る。明恵上人のパートはデビュー作である「肝心の子供」のようで良かった。自伝パートは時代性の面白さはあるものの、話の起点となった凡庸さを右往左往するところがあり、尻すぼみの感があった。2025/02/27
keiniku
2
誰なのか、書かれていない人との待ち合わせで、突然、初対面の女優と京都に行く事になっちゃうわ、明恵上人の生涯始まっちゃうわ、主人公の高校時代の話になっちゃうわ、という形で、磯崎、女優、明恵上人それぞれの人生の時間軸が描かれる。人生の中で夢見たこと計画したことの脆さ故の豊かさ。読み終えて外へ出ると、視界が広くなった気がする。ある程度歳を経た方が楽しめる小説だと思う。2022/09/16
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