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内容説明
世界的な潮流となった#MeToo運動や男性社会への疑義など、性別に伴う差別や不平等への意識が今日、かつて無いほどに高まっている。他方、「男性特権」への開き直りは論外として、多くの男性は、時には剥き出しの敵意にも直面しながら、己の立ち位置や与し方に戸惑っているのではないか。自らの男性性や既得権、そして異性との向き合い方に戸惑い、慄くすべての男性に応えつつ、女性や性的マイノリティへ向けても性差を越えた運動の可能性を提示する一冊。
目次
まえがき
第一章 多数派の男たちは何をどうすればいいのか
第二章 ヘテロ男性とは誰のことか
第三章 『マッドマックス怒りのデス・ロード』を読み解く
第四章 ヘテロ男性は変わりうるか――複合差別時代の男性学
第五章 『ズートピア』を読み解く
第六章 多数派の男たちにとってまっとうさとは何か
第七章 男たちはフェミニズムから何を学ぶのか
第八章 ポストフェミニズムとは何か
第九章 剥奪感と階級――『ジョーカー』を読み解く
第一〇章 複合階級論に向けて――ラディカル・メンズリブのために
あとがき
註
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
venturingbeyond
39
マジョリティ特権を指摘された男性の側が、葛藤もなく表面的にフェミニズムの主張に賛同し、ミソジニーとホモソーシャリティを非難したり、逆に、闇堕ちしたり開き直ったりしてアンチフェミニズムの立場を強弁するのでなく、正しく自らの特権性と向き合い、葛藤し、逡巡しながら、自身を更新していくヒントや方向性を示す一冊。“unlearn”の重要性、「大人の学びは痛みを伴う」の格言など、昨今のコーチングの手法と重なるポイントも多く、示唆されるところ大でした。2023/08/26
nbhd
23
この本を僕なりに整理すると『田中美津さんの【いのちの女たちへ】の男性による現代語訳(わかりやすい解説付き)』となる。乱れ踊る田中美津さんの文体とは対照的に、落ち着いた読みやすい教科書文体で、今日的な議論を踏まえつつ、「取り乱し」と「出会い」について書かれているように読めた。「まっとうさ」というのはつまり、「取り乱し(立ち止まっちゃう私)」と「出会い(自己変容への端緒にある私)」そのものではないか。ズートピアなど映画作品の読み解きは、男性が「ひとり」でも、取り乱し出会える可能性を醸しているように思った。2021/10/22
はるき
21
男性か女性か、白人か有色人種か、富裕層かそうではないか。どこに属していても、無意識のレベルで他者を差別してしまう事実を自覚しておきたい。濃淡はあれど、皆不自由さを感じている…。2021/10/20
Narr
18
マジョリティ男性にとってまっとうさとは。私(シスヘテロ)が無関係ではいられない性差別に反省と自己批判のみならず生成変化、つまり別様の多数派へと促す態度だと解釈。私が生み出した問題ではなくとも、私が加担してきた問題たち、それらを将来世代に残さないために懊悩し、行動する。一方でこうした態度が似非リベラルの如く特権的な振る舞いとなる可能性も思料しなればならない。剥奪感がある男性に、或いは依然支配階級で「正統な」男性像を再生産する男性に、私は何を語ることができるのか。人文学徒としても批評家である著者に倣いたい。2021/11/10
かんがく
17
私はヘテロセクシャルのシス男性であると自認している一方で、体育会系の男性中心主義的な社会には適合できず、性役割の固定や性差別に対して批判的な立場にある。優位性とうしろめたさの葛藤。『マッドマックス』『ズートピア』などの作品のフェミニズム的な批評や、マイノリティによる運動が隆盛する一方で、マジョリティがどのような位置に置かれるかの論考などどの章も面白い。「自分がマジョリティであることの自明性をつねに疑い、自らを動的に変化させていく」「ナチュラルでもノーマルでもないまっとうなマジョリティ」2022/12/21