内容説明
そこに人間の悪意をすべて陳列したいんです――ナンバーワンキャバ嬢・初美の膨大な知識と強烈なペシミズムに魅かれた浪人生の徳山は、やがて外部との関係を絶ってゆく。圧倒的デビュー作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ざるこ
58
イケメンだけどぱっとしない浪人生の徳山を初対面から気に入る初美。グイグイ一気に読まされるのは初美の人間性が掴めないから。言葉では愛情のようでも目的は他にあるよう。何かと自信の持てない徳山を持ち上げ優越感に浸らせ、本棚に並ぶ残虐な戦争や拷問の作品を語りながらのセックス。いつの間にか言葉も思考も変わっていく徳山が恐ろしかった。結局、初美に愛情なんてなく破滅に向かう同士が欲しかったんじゃなかろうか。徳山がそう流される人間だと見抜いていたのか。心が弱ってる人が読んだら引きずり込まれるんじゃないかと心配になる作品。2022/03/04
olive
48
満ちたりた幸せを願い「理想」を求めるも、「現実」は不安や焦燥、挫折...を抱えつつ悩みながらも折り合いをつけて生活している。でも、どうしても執着するものが捨てきれなかった時に人は救いを求め自分なりの教祖を見つけてしまうのだろうか?初美の語る言葉は、「現実」を生きるために蓋をしたもの。だから初美の言葉が過激なのに頷けるもの。それでも生きていくためには、馬鹿げた生き方しかできぬと思っても明日を信じて前向きに生きようとする。だが、沼にハマってしまったら....破滅へと。共感はできぬが魅せられる作品でした。2021/12/12
Junichi Yamaguchi
40
『そこに人間の悪意をすべて陳列したいんです』… いやぁ、引き込まれた。 ただ、共感はしなかった。 文学とは何なのか? 少しだけ考えてみたが、少し頭が痛くなった瞬間に思考を停止してみた。 「面白い」や「楽しい」という言葉は出ないが、読んで良かったと思える自分の感情を不思議に思う。。2021/10/08
ちっか(*´꒳`*)♪🍎
36
狂気じみた女性のペースに、すっかりハマっていく男性のお話。どうなってしまうのか、先が気になってたまらず、最後は呆然としました。恐ろしくもあり、ある意味すごい女性でした…。そして男性は可哀想すぎました。2023/02/14
Kanonlicht
35
タイトルは、主人公が初対面のキャバ嬢から渡された名刺に手書きされていた言葉。死にたくなったときは私が元気づけてあげる、という意味ではなく、むしろその逆。この女と関わったばかりに価値観が歪められていく話。人の不幸は蜜の味というけれど、それにより優越感にひたるわけでもなく、自分が不幸になることもいとわない破滅的な生き方は、当然ながらそれに巻き込まれた人間も不幸にしていく。ケースは違えど、名古屋大殺人女子学生や札幌ホテル殺人を思い出した。近づかないに越したことはない。2024/01/27