内容説明
生物種の99.9パーセントが絶滅する。生物の歴史はずいぶんと「理不尽」な遍歴をたどってきた。本書は、絶滅という観点から生物の歴史を眺め、俗説が人びとを魅了する構造を理解することで、進化論の本当のおもしろさを読者に差し出す。アートとサイエンスを全方位的に見渡し、かつ両者をあざやかにむすぶ、現代の名著がついに文庫化。
目次
まえがき
序章 進化論の時代
進化論的世界像──進化論という万能酸
みんな何処へ行った?──種は冷たい土の中に
絶滅の相の下に──敗者の生命史
用語について──若干の注意点
第一章 絶滅のシナリオ
絶滅率九九・九パーセント
遺伝子か運か
絶滅の類型学
理不尽な絶滅の重要性
第二章 適者生存とはなにか
誤解を理解する
模範解答と哲学的困惑
お守りとしての進化論
ダーウィン革命とはなんだったか
第三章 ダーウィニズムはなぜそう呼ばれるか
素人の誤解から専門家の紛糾へ
グールドの適応主義批判──なぜなぜ物語はいらない
ドーキンスの反論──なぜなぜ物語こそ必要だ
デネットの追い討ち──むしろそれ以外になにが?
論争の判定
終章 理不尽にたいする態度
グールドの地獄めぐり
歴史の独立宣言
説明と理解
理不尽にたいする態度
私たちの「人間」をどうするか
付録 パンとゲシュタポ
「ウィトゲンシュタインの壁」再説
理不尽さ、アート&サイエンス、識別不能ゾーン
反響その一──絶滅本ブーム、理不尽な進化本ブーム
反響その二──玄人筋からの批判
私たちは恥知らずにならなければならないのか
あとがき
文庫版あとがき
解説 養老孟司
参考文献
人名索引
事項索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
69
歯ごたえ抜群の難解な哲学寄りの本だった。新しい理論(進化論のような)が登場するたびに人間は知的許容力を試されるのだと思う。ひとりひとりの許容量はとても狭く、理解できないものは受け入れられない。だから自分が理解できるように理論をゆがめ、その行為はときに本質までゆがめてしまう。そういった人間の受け入れ方の態度は今のコロナ禍にも通じるものがあると思った。2021/08/04
Sam
42
これなかなか凄い本です。進化論の素人向け解説書かと思ったら大間違い、予想以上に手強かった(し、第2章はくどくて冗長で読むのやめようかと一瞬思った)けど、自分がいったいどこに連れて行かれるのかさっぱり分からず、途中からは著者の壮大な構想についていくことの快感にひたすら身を委ねたって感じでした。こんな説明では何だか分からないと思うけど、例えばグールドとドーキンスの論争について述べた章は白眉で、すでに明確にドーキンスに軍配が挙がっているとしつつもグールドの「敗走」がどれほど豊穣なものなのかを語り尽くしている。2021/05/18
ころこ
41
印象深かったのは、著者のクセのある文章が様々な引用やレトリックに満ちていて、非常に読み辛いということです。普通は一文だけでも独立して意味が通じて良いはずですが、試しに各節の後ろから読んでみると意味が通じるところが少ない。つまり、かなり文脈依存的な文章の重なりで、文系はそういったカルチャーが通じ易いものの、理系のひとには余計通じないことで警戒心と反発を煽っているだけだと残念に思いました。とはいえ、著者も昨日今日のキャリアではないので、こういった文章で書かなければならない必然性があったことは本書全体から伝わっ2021/11/20
小太郎
37
この本を読んでどんな感想書こうか悩みました。養老孟司さんの後書きが一番しっくりきます「進化論が好きでこの本を読み始めたら、アレッだまされたかなと思う。でも面白いのでとうとう全部読み終えてしまった。疲れた、なぜって立派な哲学書を読まされてしまったからである」内容はドーキンスとグールドの論争が縦筋。それらの哲学的考証が分かり易く?書かれています。ドーキンス「利己的な遺伝子」を読んだ時の衝撃は今でも鮮烈です。グールド「ワイルドライフ」も楽しんで読みました。二人の言ってることの違いがこの本で明確になりました。2021/06/12
おせきはん
28
十分に理解できたわけではありませんが、わかったつもりでいた進化論の奥深さを学術論争、さらには哲学を通じて堪能しました。現在、一般的に言われている進化論はダーウィンの説そのものではないそうです。2021/11/07
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