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内容説明
2020年4月、一枚の聖母像の前でフランシスコ教皇は、新型コロナと戦う連帯を全世界に呼びかけるミサを行った。今も昔も、悩み苦しむ人びとが求めるのは、「母なるもの」のイメージなのだろう。イコンをその源に持つ聖母は「受胎告知」「ピエタ」「無原罪の御宿り」など様々な主題を生み、祈りの対象としてのみならず、西洋美術史を強く牽引した。聖母像の起源から、ルネサンス、バロック、日本の南蛮美術やお掛け絵、現代美術に至るまで、その大潮流を追いかける比類なき美術史。
目次
はじめに 聖母と美術──なぜ信仰を集めるのか
成長する聖母 聖母信仰と聖像
第1章 聖母像の成立──イコンと黒い聖母
1 最古の聖母画像
カタコンベの聖母 ルカの聖母 オディギトリア型
2 聖母イコンの意味
「神の母」としての位置づけ 半身像の意味 ビザンツのイコノクラスム
3 ロシアの聖母イコン
エレウサ型 ロシアとイコン ブラケルニオティッサ型 ニコポイア型
4 ローマの聖母イコン
サルス・ポプリ・ロマーニ ローマの古いイコン
5 黒い聖母
様々な黒い聖母 なぜ黒いのか 地母神信仰の伝統 黒い聖母への視線
第2章 中世の聖母──涙と乳
1 イコンとナラティブ
聖母伝 最古の聖母伝壁画
2 受胎告知
受胎告知という主題 受胎告知の五段階 祈念像としての受胎告知
3 嘆きの聖母
「悲しみの人」の成立 「嘆きの聖母」からピエタへ
4 絵画から彫刻へ
彫刻の忌避 ゴシックの聖母崇敬 国際ゴシック様式の聖母
5 慈悲の聖母
ペストの生み出した図像 慈悲の聖母 シエナ フィレンツェ ヴェネツィア 「慈悲の聖母」の発展と終焉
6 授乳の聖母
「授乳の聖母」の誕生 乳と血 出産の聖母
第3章 ルネサンスの聖母──「美術の時代」の始まりと危機
1 聖会話
聖会話の成立 ベッリーニの聖会話 ティツィアーノの革新 ロットとコレッジョ
2 聖母被昇天
聖母の死・被昇天・戴冠 ルネサンスの聖母被昇天
3 聖家族
ヨセフの存在 アンナとヨアキム
4 美術としての聖母子
ルネサンスの聖母子画 ラファエロの聖母子 天上の聖母子 ラファエロの影響
5 反ユダヤ主義と聖母崇敬
ペストとユダヤ人迫害 レーゲンスブルクの聖母像
6 イコノクラスム
宗教改革と聖像破壊 聖母崇敬の否定 クラーナハの《マリアヒルフ》
第4章 バロックの聖母──危機の時代の幻視と爛熟
1 カトリック改革と聖母
カトリック改革と図像 聖母イコンの復活 絵画タベルナクルム
2 ロザリオの聖母
ロザリオ信仰 「ロザリオの聖母」の図像
3 無原罪の御宿り
「無原罪の御宿り」の教義 「無原罪の御宿り」の図像 スペインでの発展
4 幻視と顕現
幻視とは 幻視画の成立 聖母の顕現 聖人の法悦
5 ロレートの聖母
聖家の奇蹟 カラヴァッジョの聖母
6 ペストと聖母
ヴェネツィアのペスト ボローニャとモデナのペスト ローマのペスト ナポリのペスト
第5章 聖母像の広がり──植民地・民衆への浸透
1 エクス・ヴォートにおける聖母
エクス・ヴォート エクス・ヴォート図像の起源 追悼のエクス・ヴォート
2 中南米の聖母
ペルーの聖母 ミッション美術 メキシコの聖母 レタブロ ブラジルとその他の国の聖母
3 近代の聖母の顕現
カトリックの復興 奇蹟のメダイ ルルドとファティマ
4 「美術の時代」の聖母像の普及
「美術の時代」と祈念像 聖母像への働きかけ 個人的な祈念像 増殖する聖性
第6章 東洋の聖母──インド・中国・日本への伝播と変容
1 インドの聖母
アクバル帝と西洋美術 ジャハンギール帝と聖母像
2 中国の聖母
元の聖母 マッテオ・リッチと明の聖母 中国の聖母子像
3 マカオの聖母
聖パウロ天主堂のファサード マカオのキリスト教画像
4 南蛮美術の聖母
ジョヴァンニ・コーラの影響 現存する聖母像 マリア十五玄義図 踏絵の聖母
5 かくれキリシタンの聖母
生月島のかくれキリシタン お掛け絵の聖母 かくれキリシタンにとっての聖母像
第7章 近現代の聖母──衰退から変奏へ
1 十九世紀美術の聖母
宗教美術の衰退 ドイツとナザレ派 イタリアとプリズモ イギリスとラファエル前派 フランスとリヨン派
2 世紀末から二十世紀の聖母
母子像の流行 ポスト印象派と聖母 象徴主義の聖母 ピカソとマティス 戦災記念碑としての聖母 シュルレアリスムと写真
3 近代日本の聖母
山下りん 悲母観音と騎龍観音 牧島如鳩の観音図 カトリック聖堂の壁画 戦後の母子記念碑
4 現代美術と聖母
第二ヴァチカン公会議と宗教美術 ウォーホルのマリリン ジャッキーとピエタ カタリーナ・フリッチュ スキャンダルと聖母
おわりに 生き続ける聖母──なぜ美術と結びつくのか
マリアの実像 聖母の普遍性 聖母とイメージ
あとがき
主要参考文献
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trazom
アキ
クサバナリスト
Francis
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