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内容説明
16世紀に成立した建築様式である天守閣。
時が下って江戸期、「天守閣にはキリストが祀られている」という説が突如広く流布し始める。
さらにその後、日本起源説、中国建築の影響説と、時とともに目まぐるしく変化する、天守閣をめぐる言説の数々。
はたして、天守閣にヨーロッパ文明は関係しているのか、それとも日本固有の文化なのか。
各時代の膨大な歴史家の記述、建築史学の研究などを横断し、真っ当な研究からトンデモ説までをふくむ多様な言説を分析してゆくなかで浮かび上がる、日本人の幻想の系譜。
芸術選奨文部大臣賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
60
安土城の復元像は、博物館に最上部の模型が作られているが、天守の全体像については、いまだに議論が分かれていることを述べている。「天守指図」の出現はまさに画期的であり、具体的な文献の有無がいかに論争を左右するかがよくわかる。今は「天守」と書かれるが、もとは「天主」であり、安土城のものとされる「指図」にもそう書かれている。この言葉をめぐってキリスト教との関係とその否定など、江戸期からの建築学説がたえず時流にのって揺れ動いたありさまを詳しく述べていく。キリシタン文化の影響をみることは、果たして「幻想」なのか。2021/08/12