内容説明
大阪の心斎橋からほど近いエリアにある「空堀商店街」。そこには、兄妹二人が営むガラス工房があった。兄の道は幼い頃から落ち着きがなく、コミュニケーションが苦手で、「みんな」に協調したり、他人の気持ちに共感したりすることができない。妹の羽衣子は、道とは対照的に、コミュニケーションが得意で何事もそつなくこなせるが、突出した「何か」がなく、自分の個性を見つけられずにいる。正反対の性格である二人は互いに苦手意識を抱いていて、祖父の遺言で共に工房を引き継ぐことになってからも、衝突が絶えなかった。そんなガラス工房に、ある客からの変わった依頼が舞い込む。それは、「ガラスの骨壺が欲しい」というもので――。『水を縫う』『大人は泣かないと思っていた』の寺地はるなが放つ、新たな感動作! 相容れない兄妹ふたりが過ごした、愛おしい10年間を描く傑作長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
642
寺地 はるな、3作目です。王様のブランチBOOKコーナーで紹介されたので読みました。ガラス工房を巡る兄妹の物語、タイトルもガラスの骨壺に纏わるエピソードも秀逸、感動作です。本屋大賞にもノミネートされそうな作品です。 https://matome.readingkbird.com/entry/2021/09/12/150523 ガラスの骨壺も好いかも知れません。 https://www.miraisoso.net/products/list.php?category_id=1612021/10/23
さてさて
597
祖父の遺した『ガラス工房』で、作品の制作に向き合っていく兄と妹の姿が描かれるこの作品。『竿そのものが重いし、炉の熱で化粧なんかすぐに流れ落ちてしまう』という過酷な現場の中で、『熱いガラスは生きものだ』と、『ガラス』に向き合う兄と妹。寺地さんならではの美しい表現と印象深い言葉に魅せられるこの作品。『ガラス工房』の職人の”お仕事小説”の側面も感じさせるこの作品。“才能が あってもなくてもわたしたちは一歩ずつ進んでいくしかないのです”と、寺地さんが手書きで記された本の帯の言葉が心に染み渡る素晴らしい作品でした。2022/10/24
tetsubun1000mg
471
「みちづれは..」を読んで以来、寺地さんの本を選ぶようになった。今回は「雨夜の星たち」のような発達障害の兄とその妹を主役にしている。 周囲の人に合わせることができない兄を嫌っていたのだが、二人でガラス工房の仕事をすることになってしまう。 自分より兄のほうがお客の気持ちに寄り添って、希望する作品を作ることができるのに気が付く。 今作はめずらしく妹、兄と交互の視線で描いてるのもTVドラマのようで面白い。 地味なテーマで展開も控えめだが、寺地はるなさんの作品では好み。 TVドラマか映画化されそうな気がする。2021/10/31
うっちー
427
家族関係、発達障害、人間の一生等々考えさせられる小説でした2021/11/16
kotetsupatapata
424
星★★★★☆ 寺地さんの作品の普遍的なテーマである、「貴方は貴方らしく」や「多様性を認める社会」が散りばめられた作品。 兄妹という濃厚な間柄だからこその愛憎や葛藤が滲みでていて、途中苦しくなる描写もありましたが、ラスト道も葉山さんと手を取り、明日に生きていくことが出来るのでしょうか? 理解できないからと、突き放したり相手にしないのではなく、お互い理解できるよう、歩み寄れるよう努力する必要性を突き付けられました。 しかし周りに道みたいな人物がいたら、確かに関わらないよう距離を置いてしまうかな?2021/12/13