岩波新書<br> チャリティの帝国 - もうひとつのイギリス近現代史

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岩波新書
チャリティの帝国 - もうひとつのイギリス近現代史

  • 著者名:金澤周作
  • 価格 ¥946(本体¥860)
  • 岩波書店(2021/09発売)
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  • ISBN:9784004318804

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内容説明

イギリス独自の重層的なセーフティネットの中で,社会の「錨」のように今日まで働き続けてきたチャリティ.自由主義の時代から,帝国主義と二度の大戦をへて,現代へ.「弱者を助けることは善い」という人びとの感情の発露と,それが長い歴史のなかでイギリスにもたらした個性を,様々な実践のなかに探る.

目次

はじめに 日本から見たイギリスのチャリティ┴第一章 世界史における他者救済 イギリスの個性を問い直す┴一 文明と他者救済┴二 自己愛から貧者への愛へ┴三 キリスト教と慈善┴四 新興プロテスタント国に変容するイギリス 貧困・チャリティ・公的救貧┴第二章 近現代チャリティの構造 歴史的に考えるための見取り図┴一 イギリス近現代史のなかの変数と定数┴二 自助のイデオロギー,互助の共同体┴三 チャリティ┴四 公的な制度┴五 福祉の複合体の働き┴第三章 自由主義社会の明暗 長い一八世紀からヴィクトリア時代へ┴一 市民社会の台頭と,有用な弱者の救済┴二 無用な弱者への処遇┴三 エンターテイメントとしての救済┴第四章 慈悲深き帝国 帝国主義と国際主義┴一 海外進出の時代 「慈悲深き」強国┴二 帝国とチャリティ┴三 どういう金でチャリティをするのか┴四 国際人道支援の起源┴第五章 戦争と福祉のヤヌス 二〇世紀から現在へ┴一 戦争国家と福祉国家┴二 総力戦とチャリティ 善意の動員と動員解除┴三 福祉国家の時代のチャリティ┴四 ポスト福祉国家へ┴おわりに グローバル化のなかのチャリティ┴あとがき┴図表出典一覧┴参考文献┴キーワード

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

68
とても興味深い視点からイギリスの近現代史を語っている。3つのチャリティの動機を定点観測のように用いながら、時代ごとの特徴を描き出そうとしていて、まずまず成功していると思った。イギリスという強固な階級社会において、しかもレッセフェールと対外膨張によって一時は世界の頂点に立った国において、所得の再分配が如何に行われてきたか、さらには奴隷貿易や侵略という負の行為に対する、無自覚な罪滅ぼしという指摘など、得るところは多かった。ただ、もう少しイギリスの階級をしっかり押さえた論調でも良かったようにも思うが。2021/07/17

aika

46
「困っている人に何かしたい」といった3つの気持ちを軸にチャリティの面から展開する新鮮なイギリス史です。異教徒、浮浪者や物乞いは救済の対象としない選別。受給者を出資者が選挙する投票チャリティ制度。植民地支配のため、キリスト教布教の足掛かりとしてのチャリティの傲慢さなど、チャリティ=善、とは割り切れない実態の数々に驚きの連続でした。一方で、国家福祉から自助重視へと移り変わる政治に絶えず影響されながらも、様々な職業や階級の市民が連帯しながらより良い社会を築こうとするチャリティの可能性には明るさも感じました。2021/09/11

TATA

38
好著、時間はかかったけど面白く読ませてもらいました。英国のチャリティに対する人々の強い関心をキーにして、宗教史、地政学史も交えての近現代を論じる試み。偉大なる大英帝国の血統を継ぐものとして他国の人権蹂躙にも踏み込む姿勢はなるほどここから来てたのかと膝を打つ。サッチャー以後福祉国家路線が退潮してチャリティの重要性が上がったとの記載から、それでは日本でもとも思うが、英国の場合は激しい階級社会と宗教観が背景にあったからこそなどと読み耽りながらいろんな考えが頭をよぎりますが、それも楽しい読書の時間でした。2021/12/29

Aminadab

27
岩波新書の新刊で私は週刊文春の書評で知った。とっくの昔に書かれてあるべき本なのに2021年まで書かれなかったというのは、本書にもあるように第二次大戦後から1970年代までの国家福祉全盛期はチャリティの冬の時代だったということなのか。とにかく英米の社会で民間チャリティ団体の果たす役割が大きいことはニュース報道でも小説でも日々実感させられていることなのに、その全貌を通史として短くまとめた本はこれまでになかった。イギリス限定でアメリカのことは書いてないがそれだけにまとまりがいい。小説読みならぜひ読むべし。2021/12/07

崩紫サロメ

24
①困っている人に対して何かをしたい②困っている時に何かをしてもらえたら嬉しい③自分の事ではなくとも困っている人が助けられている光景には心が和む……チャリティを支えるこの3つの心情に、それぞれの時代・担い手の「ただし」を添える形で描き、帝国としてのイギリスの膨張と衰退を辿っていく。自助―互助―チャリティ―公的救貧(国家福祉)の中でチャリティの層が極めて分厚いのがイギリスの特徴であるとする。チャリティには「救う対象」を選ぶ構造があり、そこから帝国意識を浮き上がらせていく、チャリティから見たイギリス帝国。2021/06/18

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