エレン・リチャーズのユーセニクス(優境学)-環境教育論-

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エレン・リチャーズのユーセニクス(優境学)-環境教育論-

  • ISBN:9784902082043

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内容説明

訳者まえがきより(抜粋) 『ユーセニクス Euthenics(優境学)』は、19世紀後半から20世紀にかけて、優生学が人々を魅了し始めていた時代に、環境改善の重要性を訴えた環境教育宣言、と言えるものです。  アメリカ公衆衛生学の先駆者で“家政学の母”とも称される著者エレン・リチャーズ(1842-1911)は、MIT(マサチューセッツ工科大学)の最初の女子学生であり、今から1世紀以上も前に環境教育に生涯を捧げました。彼女は、環境を「一つの総体」として認識、すべての知識の究極的価値は人間の健康と環境に従って決定されなければならない、と考えました。リチャーズは社会的エコロジーを創唱(1892)、科学の在るべき方向を示し、それを人々の日常生活の向上に役立てようと努力しました。それは、農薬や殺虫剤による生態系の破壊を警告して、今や環境問題の古典とされるレイチェル・カーソン(1907-1964)の『沈黙の春』(1962)刊行に先んずること70年前の事です。現在、その思想は広くヒューマンエコロジーと呼ばれています。本書は、衛生科学を社会学的見地から発展させた彼女の「環境の学」です。彼女にとって、科学の大事な目的は、人々を健康で幸福にすることでした。 今日、健康維持のために環境をよくする学問を優生学に対応させて優境学と呼んでいますが、当時の科学の世界では、新しい科学を女性が創唱することは考えられない事でした。その後、リチャーズは、ヒューマンエコロジーを、人間が「生命に与える影響に配慮」して、人間の環境、とりわけ身近な生活環境を研究する学問、と規定しています。 (中略)   リチャーズの信条は“簡素”を旨とし、増収よりも賢明な消費に注目、最終的には精神の管理をめざしました。彼女は健全な家庭の営みを通して、間接的に社会を浄化、あるいは進歩向上させようと願っていたのです。それゆえ、ユーセニクスが家庭科固有の教科理論とみなされる所以でもありましょう。彼女の「制御可能な環境の科学」とは倫理性に源泉を置くものです。

目次


第1章 改善の機会は現実的かつ実際的であり、単に学問的ではない。
第2章 個人の努力は個人の状況を改善するために必要である。家庭と暮らし、食物等の習慣。良い習慣は時間と労力の節約になる。
第3章 地域社会の努力は、市街や公的な場所において、万人のために、水とミルク、病院、市場、住宅問題等に関するより良い状況を作り出すために必要である。隣人のための抑制
第4章 個人および地域の前進的努力の互換性。ある時は個人的努力が、またある時は社会的努力が優先する。
第5章 子どもは、望ましいように「育む」べきである。子どもの利益のための抑制。良い習慣を教えることが家庭の主な責務。
第6章 子どもは公衆衛生学に照らして教育されるべきである。学校の役割。女生徒のための家庭科。応用科学。高等教育の任務。研究の必要性
第7章 成人のための教育的刺激──書物、新聞、講演、実動模型、博物館、展示会、映画
第8章 子どもも大人も共に、無知に陥らないようにすべきである。法律の強要および法律への不服従に対する罰金の教育的価値。地方自治体、州、連邦政府の公衆衛生の管理義務。指導的検査
第9章 改善の機会に加え、改善の責任がある。主婦は、国民の健康を改善し、その富を増加させるための重要な要素であり、また経済的力である。
解説『ユーセニクスを読む』 訳注 住田 瑞生

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