内容説明
電磁気学は完成した学問であると考えられているが,現在,物質中の電気と磁気の結合が大きな注目を集め,改めて基礎研究が行われている。特に,「マルチフェロイクス」と総称される一連の物質群の中では,マクスウェル方程式では考慮されていない電気と磁気の結びつきが存在する。
この電気と磁気の結びつきを利用することで,従来の電磁気学では考えられない物理現象が発見されている。
本書では,物理学を学びつつある,あるいは一通り学んだ学部生,大学院生,社会人,研究者を対象として,「マルチフェロイクス」に関する研究の最前線を紹介する。
本シリーズ「基本法則から読み解く 物理学最前線」の趣旨に則り,学部の1年生から3年生の段階で学ぶ電磁気学,熱・統計力学,量子力学,量子化学などの基本的な法則から一歩一歩概念を書き進めていくことで,最先端の研究を理解できるように構成を考えた。これらの基本法則は,マルチフェロイクスのみならず,物性物理学の幅広い研究分野の最前線を理解するうえでも必要となる共通知識でもある。
本書の内容は,物理学の基本法則がどのように物性物理学の最前線と接点を持っているのかを理解するうえでも,大いに役立つだろう。
目次
第1章 マルチフェロイクスの面白さ;第2章 マクスウェル方程式と電気磁気効果;第3章 物質中の磁気双極子;第4章 電気磁気効果の熱・統計力学;第5章 線形の電気磁気効果;第6章 非線形の電気磁気効果;第7章 光学応答の古典論と量子論;第8章 マルチフェロイクスの光学応答;付録 参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つかさちゃん
1
この枠組みから圧電も捉えなおしてほしいのですが……。2020/02/21
ゆめぴりか
0
微視的な理解には立ち入らず現象論的に説明している読み物 何故そうなるか、という説明は全く無い2017/11/02
こずえ
0
強磁性、強誘電性、強弾性などの性質を複数もつものをマルチフェロイクスというのだが、それは従来のマクスウェル方程式の埒外にある。それについて学部2・3年までの知識を確認しつつ触れてみようというのが本書。ノーベル賞候補に目されている研究でもある。電気系の学部2・3年生以上におすすめ