内容説明
「死なないで、死なないで……。今日は、大勢の子どもが自殺してしまう日なの」――病室の窓の外に向かってつぶやいた母。「彼女はいったい何を語りたかったのだろう」――遺された娘は、その想いを知るために対話を始める。樹木希林が遺した言葉と、内田也哉子が紡いだ言葉から浮かび上がる「ままならない人生を生きる意味」とは。いま、生きづらさを感じるすべての人に贈る「命」の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
74
夏休みあけの9月1日に自殺する児童が最も多い。その事の無念さを、9月1日にベッドの上で漏らされていた希林さん。それを聞いた也哉子さんが、不登校の子ども達に寄せる思いを集約して、1人でも多くの人に知って貰いたいと本にしました。東京シューレの石井さんは同じ思いの人が寄り添って、自分だけでは無いと知る事の場の大切さを、そこで辛さの底を迎えて前に進めたEさんは、自分の意見を言葉に出して伝える大切さを学ぶ。大人の導き手とも言える志村さん、キャンベルさんの「逃げ道、出口」の大切さも伝わってきました。2020/02/16
アルピニア
67
希林さんは、亡くなる数か月前の9月1日に病室で「死なないでね、どうか生きてください」とつぶやいていたという。その思いを受け取った也哉子さんがこの本をまとめた。前半は、希林さんの対談と講演。後半は也哉子さんと4人の方の対談が掲載されている。読む人の立場によって違うと思うが、私に響いたのは「ダイバダッタに出会う」「自分の中の縮図」「わからなくて、わかってもらえなくて当たり前」「許そうという思いは鍵」「遠くを見る」。そして胸に刻んだのは不登校経験者Eさんのことば「(大人は)もっと声を上げてほしい」2020/01/24
きみたけ
57
「9月1日」のタイトルが何を意味するのかと疑問に思っていました。18歳以下の累計日別自殺者数で9月1日(つまり2学期初日)が1番多い日で、2015年に内閣府から発表されますがどのメディアも大きく取り上げなかったとのこと。樹木希林さんは以前からこの未成年の自殺に心を痛めていましたが、2018年9月15日に亡くなります。この本はその意思を受け継いだ娘の内田也哉子さんが、未成年の自殺や不登校について自らの経験談を交えて4人の関係者と対談した内容です。樹木希林さんの生前のインタビュー・トークも心打たれました。2021/02/20
anne@灯れ松明の火
46
出版当時の新聞の書籍紹介で気になっていた。読友さんご紹介。9月1日、学校に行けない子どもたちにとって、辛く、しんどい日。生前の樹木さんは「どうか生きて」と祈っていたそうだ。その祈りのバトンを受け取った娘の内田さんが、行動を起こして、この本が生まれた。内田さんが対談した4人の人、そして、この本を読んだ人々に、祈りのバトンはつながれていくのかもしれない。渦中で苦しむ子どもや保護者は、読書どころではないかもしれない。その周りの人が、読んで、何かを感じ、考え、彼らに寄り添えればいいのかも……。2020/01/10
れっつ
39
「9月1日」は、1年のうちで子どもたちの自死が最も多い日であることから、それを食い止めるために大人たちが動き出していて、昨今メディアでもそれは顕著です。この本は、この日に"どうか、生きて"と本気で祈り伝えようとした樹木希林さんの生き方と思い、そしてそんな母と共に生きてきた、娘の内田也哉子さんが、不登校経験者やその支援を実践している人たちと対談し、それぞれの経験や活動から大人が子どもに出来ることを考えています。簡単ではないけれど、真に子どもに寄り添える大人であれたら、大人も生き方に自信が持てる気がしました。2019/09/01